純喫茶丸 8knot    〜喫茶店で考えた〜

2015年からの純喫茶訪問ブログ。純喫茶をはしごする船ということで”純喫茶丸”という船の名前がタイトルです。

【東京都:阿佐ヶ谷】cafe KEGON *2017年8月26日閉店からの2017年10月再開予定!*

(2017年9月追記)*2017年10月再開予定*

との張り紙があったようだ。

地元のファンからの熱いリクエストがあったのだろう!こう言うこともあるのだ!

下記の文章はそのまま。閉店を知った時の気持ちとして残しておく。

*************************

本日、寂しいお知らせを耳にした。阿佐ヶ谷の老舗喫茶店cafe KEGONの閉店のニュースだ。8月26日(土)で長い歴史の幕を閉じるとのこと。本日、急遽KEGONの記事を書くことにした。このKEGONの閉店のニュースが、このお店を愛していた人にできるだけ届くようにと願って書きたい。行きたい方が、どうか足を運べるように。

 

f:id:saria444:20170821165214j:plain

日本三大七夕祭りパール商店街入り口の 脇

最近は喫茶店のモーニング巡りを強化していて、こちらは7月上旬に訪問していた。阿佐ヶ谷にはJR阿佐ヶ谷駅南口から長さ約700mの、250弱の店舗が並ぶながいながい商店街があり、七夕祭りで名高い町だ。KEGONは南口と北口の境目の、その巨大商店街、パール商店街の入り口より少し手前の、角に銀行がたつ筋にある。電車の中からも看板が見える。手前には同じく名喫茶店のgionが有り、ともに阿佐ヶ谷名物だと思う。夕方、時々KEGONの前まで行くが、大抵シャッターが下りていて、長い間訪問の夢がかなわなかったが、実際にお店に入ると、理由がわかった。平日の閉店時間が16:00頃で、臨時休業もある、とのポスターにあった。夕方に覗いていたせいで、なかなかタイミングが合わなかったのだ。だから朝なら、と思い、モーニングに来た。この日私が訪問した朝は、店内には求人が出ていて、ふむふむ夕方に早仕舞いなのは、シフト繰りがなかなか難しいのかなと思っていたのだが....。

阿佐ヶ谷 街の喫茶店

客層は老若男女様々だ。買い物帰りの主婦や、定年後?な感じのおじさま、バイト前の学生さん、有閑マダム。その日、10:30くらい。お昼ご飯を食べたそうな男性が入店しすると、まだ規定の時間ではないが、すでに仕込みが終了しそうだからと、メニューを見て待っててもらう、なんて柔軟な対応を見られた。素敵な町の喫茶店です。カウンターの下のコーヒーカップや、シルバー類がその行儀良さで芸術性を感じさせ、黒い制服のウエイターウエイトレスさんは丁寧ながらもキビキビしていている。分煙だし使い勝手がとても良いと思った。

また会う日まで...

閉店の理由は様々だが、町の喫茶店が一つ消えていくのはとても寂しい。ある情報によると当日は16:00閉店予定だそうだ。食事系も充実している、隣の阿佐ヶ谷マダムが注文していたアイスがレトロでキュートだった。モーニングも種類が豊富で、トーストだと付け合わせの有無が選べる。私が頼んだのは、③のトーストと卵とヨーグルトのセット500円。他にトーストとコーヒーだけのシンプルセットは420円とか、サンドウィッチとコーヒーのセット500円など、いろいろ選べる。そしてリーズナブルだ。平時もメニューが豊富で、何度きても飽きないという感じのお店だが、残りの営業日は片手で数えられるほどとなった。店構えもかっこよかった。また閉店まで会いにくる。

f:id:saria444:20170821165243j:plain

f:id:saria444:20170821165325j:plain

f:id:saria444:20170821165639j:plain

f:id:saria444:20170821170101j:plain

東京都杉並区阿佐谷北1-3-5 キリサワビル 1F

【2017年7月訪問】  

 

【東京都:中野富士見町】カフェ シャローム 喫茶店の旅 丸ノ内線全駅制覇の巻その26*中野富士見町*

丸ノ内線全席制覇の旅はまだ続く。中野坂上方南町間も巡った。
丸ノ内線は”赤い電車”というイメージだが、現在の車体はシルバーに赤線が一本入っているデザインで、赤の面積が少ないが、上記の区間の駅構内は、赤を基調にデザインされており、丸ノ内線=赤というイメージが生かされている。
さて、中野富士見町駅を下車して訪れたのは、カフェ・シャロームだ。

f:id:saria444:20170706091012j:plain

難航した中野富士見町


この区間中野富士見町駅と、中野新橋駅では、老舗の喫茶店を探すのに難航した。
ネットで”地名 純喫茶” と検索すれば、それなりにお店はでてくるが、写真だけで判断するのは難しい。こちらのシャロームも、一見洒落たカフェのようで少し躊躇した。でも創業から結構キャリアがある、との情報をえて、行ってみることにした。
入店すると、暖色系のランプと飴色のインテリアがある静かな雰囲気の喫茶店だった。ところどころ昭和らしさを感じる装飾品があり、落ち着く。
誰もが楽しめる喫茶店メニューがある。地元の方々に愛される喫茶店という感じだった。入ってみないとわからないものだ。
外観は新しいが、インテリアに老舗の名残があるお店や、
はんたいに、外観はレトロだが店内は改装済みである。などなど、
ギャップがあるから面白い。

 王道の喫茶店の使い方

この日は、メニューに写真付きで掲載されていたチョコレートパフェをオーダーした。器の中に詰まったバニラアイスと、みかんとさくらんぼにチョコレートソースの色彩がよい。王道のシンプルさと食べきりサイズが売りだ。このお店は2017年4月から禁煙になったそうだ。喫煙場所を求めてきたお客さんが諦めて帰って行く姿もみかけた。
窓側の席では、退職を申し出る従業員を説得する上司の姿があった。そういえば喫茶店は会議室の代わりにもなるんだったな。そのほか午後のおしゃべりに興じるご近所マダムや、読書に夢中なOLさんらしき人もいた。ここはいろいろなが平等に喉を潤し、お腹を満たせる喫茶店だ。モーニングやランチもあるので、使い勝手が良さそう。

老舗喫茶店を見つけてホッとする理由

この丸ノ内線の旅では、一駅ごと途中下車し、各駅にチェーン店ではない喫茶店があることを確かめホッとすることを繰り返した。各町ごとに地元民に愛される昔ながらの喫茶店が残っていてほしいと思う。その思いは、むかしBS日テレの『パリで逢いましょう』という番組を鑑賞したことに影響している。その番組でみた、パリ20区ごとに残る老舗カフェの様子が素敵だったからだ。古いものを大事に、個性を大事にすることが、文化や町並みを大事にする感性につながると思うから。人の豊かさは喫茶店を大事にすることから生まれると信じている。

 

この日の帰り。目の前にある、京王バス〈南台交差点〉バス停から乗車し、〈西新宿五丁目〉まで、初めての道をバスに揺られてみた。その後訪れたのは、MAXだ 。ここも最高で、地元の方に愛されていた。

kissafreak.hatenadiary.jp

 

f:id:saria444:20170706091032j:plain

f:id:saria444:20170706091117j:plain

f:id:saria444:20170706091057j:plain

f:id:saria444:20170706091137j:plain

f:id:saria444:20170706091232j:plain

東京都中野区南台2-52-8

 【2017年4月訪問】

 

【東京都:夏氷 かき氷のお店 その②】 まとめ 4選 ❶タカセ❷トリアノン❸カフェマルディグラ❹パーラー江古田

もうすぐ街角にはハロウィンの品が並ぶそうだ。もう夏が終わるどころか、今年が終わる気配だ。蝉が騒いでいると思ったら、夜のBGMが鈴虫に変わる瞬間はもうそこまで来ている。最近は冷夏だからか、物寂しさがまとわりついており、夏を惜しみつつ、この8月に頂いたかき氷を4店まとめて記事にする。

❶池袋:タカセ池袋本店2階喫茶室

レモンフラッペ

池袋東口駅前に聳え立つ、風情ある9階建てのタカセビルは池袋のランドマーク的存在だ。1階の入り口にはショーケースがたくさん並んでおり、見ているだけで楽しい。喫茶店といえば、というメニューで、用意していないものはないのではないだろうか。2階、3階、9階のどこかで、きっと食べたいものが見つかるはずだ。この日は喫茶室のある2階へ向かった。駅全体の乗降者数、1日平均262万人というその驚異の人の群れを、窓側から眺める。池袋西武の壁の表面を、これだけ思う存分眺められる喫茶店はここだけだ。屋上から吊るされた催事の垂れ幕を、こんなに見つめた日があっただろうか。9階のラウンジからの眺望もいい。1階でレトロパッケージのパンを選ぶのも楽しい。味も懐かしい風味で、はちみつパンやテーブルロールが、お手頃価格で普段使いにいい。この日のかき氷は、見本はバニラアイスがのっているものでしたが、実物はアイスは中に埋まっていた。最近の流行りは、大盛りのかき氷なのでしょうが、これくらいの大きさがちょうどいいと思う。タカセはいつも冷房が涼しいので、かき氷を食べたあとはさらに凍えるから、食後にホットコーヒーをいただいた。個人的に池袋は近すぎてその価値が見えにくくなっていた街だが、さいきんはまさに楽園だと思うようになった。喫茶店もたくさんある。洋服は、実店舗なら池袋で買うことが一番多い。電化製品をかうなら池袋のビックカメラだし、製菓用品をかうなら池袋西武の地下の、富澤商店をよく利用する。無印良品は池袋店に、かなりお世話になっている。

東京都豊島区東池袋1-1-4 タカセセントラルビル 2F

 

f:id:saria444:20170817023207j:plain

f:id:saria444:20170817023238j:plain

❷高円寺:洋菓子店トリアノン

メロンフラッペ

こちらは、高円寺駅南口の大箱だ。この赤い看板は圧巻。この街は、芸人や音楽家を目指す方が多く住み、ファミリー層にも優しいので、商店街が発達している。看板は、居酒屋やチェーン店の雑多なものが多々掲げられているが、トリアノンのこの赤一色の看板は潔ぎよい。

この日、氷メロンを注文しようと決めてきたが、私のすぐあとにきたおじさまも、別のグループの男性もみんなそろって氷メロンを頼んでいたのが面白い。なんでだろうか。男性って氷をたのむとき、イチゴは頼まないのか。色で選ぶのか?
私は、最近たべていない色のシロップを頼もうと思い、メロンと決めていた。
クリームソーダーの場合も珍しい色があったら頼んでしまうが、かき氷も、その日の気分よって好きな色を頼むのが楽しい。

こちらはおおきな背の高いかき氷だったが、そとが蒸し暑かったので、簡単に平らげた。いまとなっては、この日の日差しが恋しい。高円寺といえば、むげん堂も好きだ。インド料理屋やエスニック料理がまだ珍しかった頃、スパイスやカレーミックスを買ったり、インド綿のスカートを買ったりした。象のパターンが入ったスカート、気に入っていてだいぶ長いこと愛用しました。

東京都杉並区高円寺南4-26-12 1F

f:id:saria444:20170817023521j:plain

f:id:saria444:20170817023638j:plain

❸下北沢:マルディグラ

苺のかき氷

先日、散歩していて見つけたマルディグラの看板。あ、かき氷がある!「散策中にふらっと入りたい」と思う時に限って、かき氷を提供する喫茶店に出会えない。人生の不思議で、探していない時に限って探し物は見つかる。その日、もうお腹いっぱいだったのでもう帰ろうかとおもっていたところ、たまたま見つけた。お店の前に来た時、陽の光が、よく手入れされた木々の隙間からきらめき、高原性の避暑地に来たような気分になった。中はひんやり静かだ。下北沢という若者の町にあるからこそ、その静謐が際立つ。窓側の席に座り、〈氷〉の旗の揺らめきを眺めながら、可憐な苺かき氷をいただいた。

下北沢はHAIGHT&ASHBURYという古着屋さんが好きだ。ショーケースに赤いヒールが飾られたポップな場所だ。ヴィンテージコーナーでワンピースや雑貨を探すのが好きだ。
東京都世田谷区北沢2-31-1 サン・ローザ 1F

f:id:saria444:20170817023716j:plain

f:id:saria444:20170817023751j:plain

❹江古田:パーラー江古田

沖縄ぜんざい

江古田は美味しいハード系のパン屋さんが多いです。ここはパン屋さんなのですが、”パーラー”と名乗る所以はこの沖縄ぜんざいがあるからだそう。沖縄ぜんざいは黒糖で煮ていて、私にとって身近な、いわゆるあんこと違い豆が大きく甘さ控えめ。豆の味がしっかりして歯ごたえあり、豆も黒糖も滋味たっぷりです。ここはコーヒーも濃くて美味しいのです。注文ごとに豆を挽いてたっぷりの量を提供してくれます。”売り”のパンはもちもちの小麦ぎっしり。イベントに出展すると行列&すぐに売り切れてしまうそうです。友人宅の持ち寄りパーティの手土産にしたら、みんなとても喜んでくれました。嬉しい。

夜は行ったことはないのですが、満月にワイン会などを開催しているようです。
江古田は一軒家カフェや喫茶店がまだまだあり。住宅街にふとセンスのいいお店を見つけられます。同じハード系パン屋さん、ブーランジェリージャンゴも好きです。

東京都練馬区栄町41-7

f:id:saria444:20170817023851j:plain

f:id:saria444:20170817023943j:plain

【2017年8月訪問】

 その①もよろしければご覧ください♪

kissafreak.hatenadiary.jp

 

【神奈川県:鎌倉】豊島屋3階 パーラー扉 お供:川端康成『山の音』

今回は鎌倉の喫茶店の記事を書こうと思う。扉は、JR鎌倉駅前にある、鳩サブレーでおなじみの豊島屋の3階にあるパーラーだ。

f:id:saria444:20170816232937j:plain 

鎌倉が舞台の小説

最近読んでいるのは川端康成の『山の音』だ。湘南や江ノ島のように、海のイメージがある鎌倉だが、鎌倉の山を舞台にしたこの小説がふと読みたくなった。夏で始まり、秋で終わる小説だ。今から読みだすには、とても良いタイミングだと思う。春や冬の情景も出てくるが、晩夏から秋への切なさが、いい雰囲気で書かれている。蝉もなかなか重要な登場人物(虫物?)だ。横須賀線の車窓のシーンや、四季折々の仏都鎌倉の草花が登場する。読んでいて活き活きとした情景が浮かんでくるような色彩豊かな物語だった。

「山の音」掲載の花言葉

作中にいくつもの草花が出てくるが、花言葉を知っていたらより趣きがあるのではないかと思い、花言葉を調べながら読んだ。

主人公(♂)が嫌いだと、”八つ手”には「分別」や「健康」という花言葉がある。この花は、主人公の心配事や悩みごとを象徴していると思う。これらは、主人公から最も手遠いところにある事柄だ。主人公は不健康である。 頭だけ外して修理に出したいとか、頭を外して胴体だけを休ませたいともいう。考えすぎで脳が疲れているのだ。主人公は神経質すぎる。印象的な颱風の夜のシーンがある。その嵐の翌日に、頭ごと散ってしまったひまわりがある。対照的に強風に負けず咲き続けていた葉鶏頭があるが、その花言葉は「不老不死」だ。

作中に登場する植物は多岐にわたり、物語の情景に彩りをそえているが、その花言葉も意味深だ。

 

枇杷.....あなたに打ち明ける 密かな告白

アカシア.....秘密の恋

よもぎ.....決して離れない

シダの葉.....誠実

....過去の思い出

 

これらはすべて作品のキーワードだった。

特に衝撃的だったのは、カラスウリ。なんと「男嫌い」という花言葉だ。他に「良き便り」や「二面性」という意味もある。花は夜だけしか開かない花として有名だとか。夜だけ開く花とは、それは主人公(♂)が夜に見る”夢”の比喩なのかもしれない。しかし男嫌いという意味は、一体何だろう。それはこの小説を読んだ人なら理解できるかもしれない。誰のことなのか、それは読んだ人によって解釈が違うかもしれない。章ごとの主人公が見る夢の描写も面白い。


川端康成の傑作

『山の音』のストーリーは、純愛かミステリーか。ページをめくる手が止まらない。練られた作品だと唸りながら読んだ。鎌倉、新宿御苑、本郷といった関東の身近な土地が舞台なのも興味を持って読んだ理由だ。舞台は終戦後の日本で、戦争未亡人や戦地に赴いた人物が出てくるのも、一読に値する。鎌倉関係の品を読んでみたい、と軽い気持ちで手にとったが、さすがノーベル文学賞作家の作品だ。深い山のように高密度で底知れない深みに嵌った。


茶店 ”扉”の話

茶店 鎌倉の扉は、鎌倉が舞台の小説を読んだことで思いだした喫茶店だ。

この日の鎌倉ハムのサンドイッチは肉厚でジューシーだった。美味しかった。パンはトーストしたものと、焼いていないものとの二種類があって楽しめた。鎌倉駅前なのに、意外とすいている穴場パーラーだ。1階のお土産売り場は混雑していたが、3階は意外にも空席がある。窓からバスターミナルを眺めながら、これからどこに行こうか計画を練るのが楽しかった。まさに鎌倉の扉の象徴ともいえる喫茶店だ。
豊島屋は、「材木座」「由比ガ浜」「腰越」各海岸のネーミングライツを得たことで有名だ。けっきょく、〈鳩サブレー海岸〉ではなく、海岸名をそのまま残す、と英断した。地元を愛する企業が権利を得るとこうなるのだ!この対応はすばらしい!

 

f:id:saria444:20170816232953j:plain

f:id:saria444:20170816233114j:plain

f:id:saria444:20170816233045j:plain

神奈川県鎌倉市小町1-6-20 扉ビル 3F

【2015年10月訪問】

【徳島県:板野郡松茂町】ハレルヤスイーツキッチン*夏の山陽&四国の旅行

山陽&四国の旅の続きを書こう。今回は徳島県だ。この日は、香川から徳島を経て最終目的地は、宿のある愛媛だった。このお店はカフェにあたると思うが、ご当地品なので記事にしようと思う。ここは、徳島のご当地品、タヌキケーキがあるハレルヤスイーツキッチンだ。

f:id:saria444:20170811200320j:plain

f:id:saria444:20170811200332j:plain 

瓶のラムネ飲料と菓子のラムネ、鳴門海峡なると巻き。私は、どちらの先にうまれたか順序を勘違いしていたものだ。特に後者、ここ徳島で見た鳴門海峡のうずは、世界に誇れる自然遺産だ。渦の直径は最大で30mで、この大きさは世界一だそうだ。地形が生み出す偶然のアートである。この潮のうずを目の当たりにして、なると巻きってここから来たのだ、と初めて実感した。本物に出会った。

徳島の鳴門海峡訪問はこの旅のメインだ。徳島県には初上陸だが、この日は香川から、徳島経由、愛媛にいく予定だ。鳴門海峡は、干潮時刻に訪れなければならない。干潮時刻(満潮時刻も)は、その潮流が最速となり、潮の渦を最高のタイミングで見れる時間である。特に、新月満月の日だったらさらに最高だ。この日は満月の翌日だったので、抜群のタイミングだった。観測時刻やその移動時間を考慮して、あわよくばお茶でものめれば、と思いあぐねていた。

参考にしたのは菅原佳己さんの『日本全国ご当地スーパー 隠れた絶品、見つけた!』である。この本で徳島県のご当地品としてタヌキケーキが紹介されていた。これはかわいい!計画段階では、途中のスーパーでタヌキケーキを買ってホテルに帰ってから食べる予定だった。しかし前日の調査で、工場直営店ではイートインできると知り、急遽ここでオヤツタイムを取ることしたに。行ってみたらはハワイのカフェを彷彿させる外観だった。ヤシの木が立ち、広い敷地を惜しみなく利用した、とても明るいお店だった。観光バスが立ち寄る様子から、ここは名所のようだ。ここは、たぬきのとぼけた表情と赤いドットの包装紙がかわいい、徳島銘菓〈金長まんじゅう〉工場併設のカフェだった。遮る高い建物がないので、日光が激しくさし、夏を満喫できて爽快だった。

徳島県はたぬきが神様のような存在なのだ。ジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』のモデルとなった「阿波狸合戦」では、たぬきは英雄として登場する。滋賀県では信楽焼の狸がたくさん見られるが、徳島県も狸の置物がたくさんある。ここのケーキは白目が大きいタイプだ。ぎょろっと上目遣いに見つめられると食べづらいわ〜。(笑)長野県にあるつぶらな瞳のたぬきさんも、味わいがあって可愛いと思う。バタークリームが懐かしく生クリームのケーキよりも珍しい。かつて生クリームが高価だったため、バタークリームでケーキを作っていた時代があったが、バタークリームは、今や生クリームにとってかわられ絶滅危惧種になった。ふと思いましたが、この時代にあえてバタークリームを欲しがるという潮流は、ラムネやなると巻きに感じたものと同じ現象ではないでしょうか。どちらが先かなんて、悠久の時を経てただそこに広がる自然現象の前ではとても些細な疑問のように思えた。新旧が心の中が静かに融解する。あるときは穏やかな流れがあり、またある時は怒涛のように押し寄せる流れもある。抵抗力で弾かれても、また再び強い吸引力で混じり合い、ふかくひとつの流れになっていく。それはまるで潮流現象のようだ。喫茶店に関しても、どこが古いとか新しいとか、純喫茶のカテゴリーに当てはまるかどうかとか、そんな頑ななこだわりもあまり気にしないようになった。いつかはひとつの潮流になっていくからだ。

f:id:saria444:20170811200353j:plain

f:id:saria444:20170811200420j:plain

f:id:saria444:20170811200444j:plain

f:id:saria444:20170811200549j:plain

f:id:saria444:20170811200636j:plain

f:id:saria444:20170811200746j:plain 

f:id:saria444:20170811200835j:plain

徳島県板野郡松茂町広島字北川向四ノ越30
鳴門海峡から車で20分強くらい。徳島ICから車で15分程度の距離でした。

【2017年7月訪問】

【岡山県:岡山空港】レストラン シャロン  夏の山陽&四国旅行 お供:田山花袋『温泉めぐり』

山陽&四国の旅 今回はまた岡山の喫茶店へ。岡山空港内にあるレストランシャロンだ。

f:id:saria444:20170812142125j:plain

これを書いているのは夏の昼下がりだ。机に向かって物を書いているとき、傍で蝉の声をきくと、夏休みの宿題をしている気分になる。

山の日にお誂え向きの一冊「温泉めぐり」

8/11は山の日だ。岡山空港は標高789フィートの場所にあり、岡山平野を見下ろせる山の中にある。岡山にはそれほど高い山はないので、県内で一番高い場所に行ったことになる。待ち合わせに使った空港内のレストランの窓からOKAYAMAという、木々で刈られた自然の看板を眺めた。目に青を取り入れた。


田山花袋の『温泉めぐり』という本が気に入りすぎて、今2巡目だ。この本の中で、日本の温泉を山の温泉、海の温泉、平野の温泉と分けているが、
山の日にちなんで、山の温泉の章で綴られていた素敵な文を引用しようと思う。
諏訪方面の温泉について書かれた章だ。

この多い山の湯の中で蓼科の南の裾にある温泉は、中でも一番静かで、世離れしているということであった。そこは森林帯で、林の陰も深く日光がそれを漏れて、谷の流れに落ち、駒鳥や杜鵑なども鳴いて、悠々旬日の興を十分に得ることができるという。

そして暇があったら蓼科に登ってみる。この山はそう大して登り道は険しくない。それに表の佐久平野と、裏の諏訪平野とを併せて望む形になっているので眺望も単調でない。(略)...この八ヶ岳の裾野は、非常に風景の良いところでここからは、北アルプスの一帯の連瓦も見ることもできるし、さらに前に南アルプスの駒ケ岳、鋸岳、奥千丈などをも見ることができて、眺望が決して平凡ではなかった。富士見駅付近にある帰去来荘あたりの眺望は越後の赤倉の持った高原生とともに多く得ることのできないものである。(出典:田山花袋「温泉めぐり」 岩波文庫 p148)

 

田山花袋はまえがきでこう書く。

「温泉の紹介と共に日本の風景や地形や名勝の描写を心掛けた」

(出典:同上)

大人の夏休みの宿題

確かに地名、地形が具体的に出てくる本だ。まだまだ知らない世界があるなと、今一度地図帳とにらめっこしながら読んでいる。地理の勉強をしておけばよかった!でも、東大受験に向けて勉強中のオードリーの春日さんが言っていましたが、大人になってからの勉強はこれまでの経験値がある分、頭に入って来やすいそうだ。地理だって、実際に訪れた場所の復習だったり、テレビや雑誌で聞いたことがありますから、まっさらな状態で頭に入れていた子供の頃とは違い、だいぶ面白く学べる。私の地図帳との格闘は、まるで大人の夏休みの宿題のようだ。「温泉めぐり」の文章から、木々の陰や木漏れ日、鳥の声などの風景が浮かんできて、高原性の景観と空気といった情景が少し涼を感じさせてくれる。空想で涼しくなれる。ある英国人が「日本人は蝉の声を聞くと暑いと言う。その感覚がわからない」と言っていた。音で体感温度が変わる、そういう感性は日本人独特なのかもしれない。夏の風鈴も風流だ。歌でも松尾芭蕉の「閑さや岩に沁み入る蝉の声」は有名すぎるが、この短文からでも蝉の声や気温までも伝わってくる。日本人の感性に誇りたい気分だ。

旅に出て自分を取り戻す 

旅から帰ってきて、すこし心が穏やかになっている。
田山花袋も「旅に出て自分を取り戻す」という感覚があったそうだ。インターネットでも旅の疑似体験はできるが、匂いや空気や、温度といったリアルな空気感など、その効果は実際に行かなければ得られないと思う。

この日の往路便は、岡山空港の天候状況により、条件付き運行で羽田空港に引き返す可能性があった。無事に着陸できた後のホッとした気持ちはいいあらわせない。そのあとのシャロンでのソフトクリーム、クレミアの濃厚な甘さも冷たさも、岡山空港の少しくらい涼しげな山の空気で頂いたことを思うと、これはここでしか味わえない味だった。

f:id:saria444:20170812143729j:plain

f:id:saria444:20170812142245j:plain

f:id:saria444:20170812142333j:plain

f:id:saria444:20170812142437j:plain

f:id:saria444:20170812142623j:plain

f:id:saria444:20170812142835j:plain 

f:id:saria444:20170812143755j:plain

f:id:saria444:20170812143817j:plain

f:id:saria444:20170812143828j:plain

 岡山県岡山市北区日応寺1277 岡山空港ターミナルビル 2F

 【2017年7月訪問】

【香川県:高松市】城の目 *夏の山陽&四国の旅行

さて、香川県の喫茶店にいこう。当ブログでは、純喫茶*香川県のカテゴリーを今日初めて加えた。2年前にも香川県に来ているが、写真が眠ったままのようだった。早めに他のお店も記そうと思う。その中でも、今回の城の目は香川県一、いや日本一ともいえる崇高な喫茶店だ。

 

f:id:saria444:20170808104330j:plain

クリエーションの待ち合わせ場所

城の目は世界でも名高い建築家、彫刻家、詩人など各分野のクリエーターが交流した場所だ。当初はクリエーターたちだけの打ち合わせ場所だったところを、後に喫茶店として開業したそうだ。入店すると眼前に見えるのは、昭和39年開催のニューヨーク万博で日本館の外装の試作品として作られた石壁だ。そのほかにも世界初の石造りのスピーカーなど(その重量3~4トン!)貴重なアート作品に囲まれた空間だ。こんな歴史的な美術品を目の前にして喫茶メニューをいただけるなんて最高だ。喫茶店好きとしては一度は訪問しておきたいと思い、この日に念願が叶った。はじめはなんだか恐れ多くて端っこの隅の方に小さくすわっておこうとしたが「せっかくだから広い席に座りなさいよ♪」とマダムに誘われ、暗灰色の玄武岩のめの前に座った。
火山岩でできた壁なんて、ほかにどこで出会えるだろう。

瀬戸内海の転流 海の復権

香川県といえば直島のほか、島々がアートで彩られる県として最近は名高い。昨今でも、四国自体が本州と海を隔てて存在しているせいか、私には独特の楽園に見える。しかし内情は、高齢化が進んでおり、そのため地域の活性化が減って、島々独自の文化が消えつつあるそうだ。そこに風穴を開けようと、海の復権をテーマに瀬戸内国際芸術祭が開催されるようになったらしい。瀬戸内海は、美しい自然と海の煌きがある場所だ。この島々を文化発信地とし、世界にその名を広め新しい時代を迎えようとしているとのことだ。

ところで、四国には名の通った海峡がたくさんある。鳴門海峡や来島海峡などがそうだ。海峡というのは、陸と陸の間に挟まれた海の幅の狭くなったところのことで、瀬戸内海のように大小様々の島が狭いエリアに点綴する場所は、必然的に海峡が多く存在すする。島々の珠のような連なりは、景勝としては風流だが、船舶の航行にとっては難所だ。海峡では転流時という”潮流が流れの方向を変えるタイミング”があり、船舶はその時刻を計算して航行計画を立てる。瀬戸内海では、転流がよく発生する場所のため、「芸術祭で島の活性化を」という新しい潮流を発生させる地として、ここほど説得力のある地はないだろうと思う。芸術祭が開催される各島へは、城の目がある高松の港=高松港岡山県宇野港が本州への玄関口となるが、一日数本のフェリーで行くほかに交通手段がないので、一日ですべてを見て回れないと思う。効率や均一化という価値観からもっとも遠く離れた価値観を感じるだろう。船でしか廻れない芸術祭なんて魅力的だ。ある意味船が主役かもしれない。瀬戸内海は造船業が盛んだ。新造船の試運転もよく行われている。四国に住む人にとって、船が日常の移動手段であることもで実感できるだろう。

こんぴらさんと金陵以外の香川県

この四国の旅では、瀬戸大橋としまなみ街道を通った。真下では造船作業が間近に見られて感動した。瀬戸内海の明るい陽に照らされた碧い海と、波で描かれた白い水尾が美しい。濃淡のある山畑の彩りと、鈴なりの柑橘類の黄色とがまぶしかった。瀬戸内海は絵画のような景色が満載だ。

香川県といえば、アートの街だ。しかも特別じゃなく日常の場所にある。こういう城の目のような喫茶店がごく普通に存在する素晴らしさ。本当に羨ましい。前回の高松訪問時には定休日で断念したが、今回は入ることができてうれしい。香川が気に入りすぎて、東京でもおいしい讃岐うどん屋さんを探してしまった。城の目は店内撮影禁止のため、写真は外観のみだ。店内の魅力が伝わるとうれしい。ちなみにクリームソーダをいただいた。純なメニューだった。

f:id:saria444:20170808104425j:plain

f:id:saria444:20170808104505j:plain

f:id:saria444:20170808104548j:plain

f:id:saria444:20170808104705j:plain

香川県高松市紺屋町2-4

【2017年7月訪問】