【東京都:三ノ輪橋】パーラーオレンジ
今日の記事は、ぜひ書き残したい珠玉の喫茶店を紹介する。
パーラーオレンジは都電荒川線 三ノ輪橋近くにある喫茶店だ。
きっと喫茶百景
屋根を覆う緑と、橙の灯りと薄暮の光とが珠となって刺繍(ぬいとり)をする。赤いベルベットのソファに灯りのほのかな店内。もう、たそがれずに入られない。田山花袋の『東京の三十年』も永井荷風の『日和下駄』も移りゆく東京の姿を偲ぶエッセイだが、いつの時代においても、新しいものの中に古きを見つけ、日がな詩趣のありかを探すことが、ひそかな愉しみのようだ。関東の駅百景に選ばれた都電の三ノ輪橋駅は、春にはたくさんのバラに包まれながら、都電の出発の鐘が響くさまは、貴重な懐かしい東京の一コマだ。
人情商店街ジョイフル三ノ輪
帰りにジョイフル三ノ輪を道草した。日和下駄ならぬ白いエナメルのサンダルを履いて。夕方の商店街を歩くと、なんとも愁が胸にこみ上げてくる感じがある。
足を止めずに入られない練りもののお店。ちょうどこの時間は、遊び盛りの子供たちが家に帰る頃ころ、あったかいご飯が待っている食卓に、グツグツ煮込まれたお鍋のいい匂いをそうぞうする。
オレンジはそんな東京の懐かしい時代の空気をまとった喫茶店だ。お店から出ても立ち去りがたく、振りかえり振りかえり何度も外観を眺めた。
【2017年4月訪問】