純喫茶丸 8knot    〜喫茶店で考えた〜

2015年からの純喫茶訪問ブログ。純喫茶をはしごする船ということで”純喫茶丸”という船の名前がタイトルです。

【東京都:下北沢】トロワシャンブル 喫茶店のチースケーキ編 

今日は、下北沢の〈カフェ トロワシャンブル〉を紹介する。

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映画の撮影でも使用される店内は、美術品さながらである。
コーヒーによく合うチーズケーキは、ベイクドかレアタイプかを選べる。
この日選んだのは、ベイクドだ。濃いめのコクがある珈琲は、わたしの好きな味だ。

コーヒーを浚(さら)う

さいきん船員仲間が、カップの底に残った珈琲一口を飲みきる際に
「珈琲を浚(さら)う」と表現した。
これはとても独特の表現なので紹介したい。


船舶専門用語で、strippingというものがある。
液体やバラ積みの貨物を荷役するときに耳にする言葉だ。
特にタンカーの荷役中、底の方に残った油を取りきる際に使うのだが、
日本語では

「浚う」という。

 最後まで取り除く。みたいなニュアンスだ。

 

鍋を浚う

仲間が集まると、普段からこんな専門用語が自然に会話に盛りこまれる。
以前、鍋をかこんだ時に、いわゆる”遠慮の塊”に対して
「浚っていい?」というセリフが聞こえてきた。
そして、コーヒーを飲み干す時にも「浚(さら)う」というセリフをつかっていた。
なんだかとても興味深い。

”stripping”

ショーなどで裸になっていくあの“ストリップ”と同じ意味だ。
最後の衣服の一枚までを取り尽くし、裸にするという意味だから、
なるほど、と腑に落ちた。
実のところ、私はstrippingの意味が覚えにくかったから、
ストリップショーを思い浮かべながら暗記した。

言葉の旅

言葉のそもそもの意味を知ることが好きだ。
言葉は派生して色々な意味に変化する。
そもそも語源はなんだ?と遡って知の旅をするのが良いのだ。

 

そんなことをかんがえながら、チーズケーキとコーヒーの正義の組み合わせをいただいていた。
美味しいからもったいなくて、大事に少しずつ飲んでいたコーヒーカップの残りはあと少し。
おもいきって浚い、読んでいた小説を閉じ、店をあとにした。

出口脇のプランターに見つけたのは愛すべき”くせ字”だ。

”タバコ捨てないで!”

”!”の書き方が80年代に流行った丸文字風だが、いつ書かれたものだろうか。
やっぱり人間の文字って可愛い。
パソコンで印刷された文字には慣れたけど、
味わいのある直筆の文字がとても好きだ。

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東京都世田谷区代沢5-36-14 湯浅ビル 2F

【2017年8月訪問】

 

【東京都:神保町】珈琲舎 蔵 喫茶店のチーズケーキ編

今日は、神保町の〈蔵〉を紹介する。

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珈琲舎という響きと、この重厚な木の看板から、ストイックなイメージがする。
中に入ると、店内は照明が落ち着いていて、それだけで癒される。
壁に掛かるまっすぐな眼差しでじっとこちらを見つめる女性の絵画と、テーブルのゴージャスなフラワーアレンジメントと、棚に並ぶコーヒーカップの穏やかな色彩が印象に残っている。
メニューにはコーヒーと少しのスイーツがある。
本の街にあって、プラス数百円でコーヒーがおかわりできる。
のんびりしてしまう。本のページをめくりながら過ごす時間が愛しい。

 

わたしは収集癖がある。ノベルティや紙モノ、それに喫茶店のマッチが加わった。
物だけでなく、文字やことばを集めることも好きだ。
ずっとむかしから本を読むことが好きだ。
物語の中に未知の言葉を見つけ、永遠に辞書サーフィン(ネットサーフィンならぬ)をするほど、没頭していたのを覚えている。
だから情報収集は、趣味の一つだと思う。最近集めているのは、喫茶店の情報だ。
集めた情報をもとに、こうして喫茶店に通う。
そこで本を読み、また言葉を集める。

 

最近読んでいる本は、『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』だ
キャスリーン・フリン (著), 村井理子 (翻訳))

 

わたしはあるとき、ほんのわずかな期間だが、菜食主義をとおしていた。
アレルギーがひどかった時期で、当時、食生活の見直しをしたのだった。
そのため、調味料にこだわった。ソースや塩、油に香味野菜やスパイスに。
今でもタレは市販品ではなく、手作りしている。
少しずつ毎回買うよりも結果的に安あがりだと思う。
それに、できたてはフレッシュで美味しい。
この本で油やチーズの味の比較する場面がある。そのシーンにとても共感した。

 

 私も数年前までは、この本の登場人物のように、ほとんど料理ができなかった。
外食がほとんどだった。でもそれだとかなりの出費になる。
でも、これまでの外食の経験があるからこそ、料理の際、再現力がついたことは確かだと思う。
どんどん外で好きな味を探す。好きの基準を探す。
だから今のわたしは、毎回違う喫茶店を訪問して、新しい“好き”を探している。

 

チーズケーキの味も喫茶店ごとに違う。
レアもあるしベイクドもフレッシュもある。
どのコーヒー(産地や焙煎の仕方)にどのチーズケーキが合うかも、
大事な要素だと思う。でも、その自分の好きは、自分にしかわからない。
美味しいかすごく美味しいかを探しに来る。
蔵のチーズケーキはすごく美味しい。
こうして、好きなものを追い求めた記録をここに残している。

〈蔵〉でチーズケーキを濃厚に味わったこの時間は、
最高に好きな時間だった。

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東京都千代田区神田神保町1-26 矢崎ビル 2F

【2015年8月訪問他】

 

 

 

【東京都:八王子】田 セレオ八王子北館店  喫茶店のチーズケーキ編

今日は八王子にある〈珈琲倶楽部 田〉をお届けする。

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桜チーズケーキ

ホットケーキ編がひと段落したので、今日からチーズケーキ編に行きたいと思う。

〈珈琲倶楽部 田〉で頂いた桜チーズケーキだ。
ピンクのシュガーでデザインされた桜の模様が可愛い。
八王子には純喫茶が多く、一度はきてみたい街だった。
昨年、春の青春18きっぷが1回分を残し、そろそろ期限が切れそうな日があった。
思いつきと駆け込みで、中央線に乗って八王子の純喫茶行脚をした。
その時は5軒くらい回ったと思う。
最後に、八王子駅ナカの〈田〉の支店で、最後の悪あがきをした。
純喫茶はしごの締めとして、締めチーズケーキをした。

正義の組み合わせ

チーズケーキとコーヒーの組み合わせは正義だ。
ベイクドタイプも、レアタイプも、フレッシュなブラマンジェタイプも全部好き。
私の好きな食べ物はチーズだから、ピザもラザニアもドリアもグラタンも大好きだ。
だからもちろんチーズケーキもだ。

 

ところで、私は食べること自体が趣味みたいなもので、ほとんど苦手な食材はないが、唯一苦手なものがしいたけだ。占い師しいたけさんも”しいたけ”が嫌いで、
克服したいがために”しいたけ”と名付けたときく。

しいたけ嫌いを自称する人多い説

本を読んでいて、また新たなしいたけ嫌いに出会った。
最近読んでいる『星の子』(今村 夏子著)の主人公だ。

そこでハッと思いあたる。しいたけが嫌いというエピソードは、人に受け入れられやすいのか、身の回りでも、自称する人が多い気がする。
苦手な食べ物の答えとして、しいたけはマジョリティに入る。
人参とピーマンは何かあたりまえすぎるが、しいたけだとちょうどいいのだろうか。

苦手のプラシーボ効果

なんで私がしいたけが嫌いなのかというと、幼少期の憧れのアイドルが、
嫌いな食べ物「しいたけ」とプロフィールにかいていたからだ。
だから気持ちを似せようとし、苦手なふりをしていたら本当にそうなってしまった。
これがプラシーボ効果か??

バブルの頃には、アイドルタレント名鑑が売られており、
それを読むのが好きだった。
好きな人が嫌いなものは嫌い。という心理にしいたけが犠牲となった。
嫌いというのは、ただのおもいこみだから食べられるはず、と言い聞かせ、
少しつ克服しようとしている。
まだまるっと大きいのは無理だが、刻んでいたらなんとかいけるかもしれない...。
しいたけさん(占い師じゃない方。野菜の方)いままで勝手に嫌っててごめんなさい。でも、もしかしたらしいたけさん(野菜じゃない方、占い師の方)も同じ理由で嫌いだとしたら、面白い。
もしかしてしいたけさん(野菜じゃない方、占い師の方)は、同世代っぽいので当時のアイドルの影響....それは、まぁないかな。

ちなみに『星の子』(今村夏子著/朝日新聞出版 )
は2018年本屋大賞のノミネート作品だ。

今日は3/3、 ひな祭りだ。
最近は、桜風味のお菓子やコーヒー紅茶がたくさん売っていて楽しい。
桃の節句の今日は、無難に道明寺の桜餅を食べた。春の味わいだった。

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東京都八王子市旭町1-1 セレオ八王子 北館 B1F

【2017年3月訪問】

【東京都:(馬喰横山)東日本橋】ウール 喫茶店のホットケーキ編

きょうは馬喰横山にある東日本の〈ウール〉を紹介する。
このネーミングは、繊維問屋街ならではだ。

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ウールを脱ぎ捨てて

今日は満月である。このあと少しずつ欠けていく月のように、
冬の気分も溶け、やがて春になっていく。

今日から3月だ。冬が去り、春に向かって季節は進んでいるのに、
あまのじゃくなもので、冬のざっくりウールニットが恋しい
そんな思いのなかで、馬喰横山のウールのことを思い出した。

このお店のホットケーキは、学校帰りに友だちといったファミレスのようなお店の
ホットケーキに似ている。そう、それは、多分レンチンのだ。
でもそれもまた、懐かき思い出の味なのである。

「ファミリー・ライフ」

最近読んだ本は、

『ファミリー・ライフ』(アキールシャルマ著 小野正嗣訳)
装丁の絵が優しい感じで、タイトルも直球なのでつい手に取ってしまった。


裏表紙の書評には

「兄を奪ったあの夏の事故。愛と痛み、祈りに満ちた自伝的小説」とある。

一気に読んだ。登場人物は、インドからアメリカに移住してきたシャルマ一家ほか、
インド系アメリカ人がほとんどである。
私は業務で、インド人ともかかわっている。
インドのことを理解するのに、役に立つだろうかと思い、インド系の作家が書いた作品を読む。
しかし、人種や国のちがいというのはあまり関係なく、人間だれしもが持っているだろう心情が描かれていた。

私には救いの本だった。著者のシャルマ氏も文学に出会うことで救われたそうだ。
私もそうである。本は〈旅する箱〉であって、
時間も空間も旅行できる。人の心の中へもいける。
何より、字を追うだけで心が落ち着く。
ひとりになりたいとき、没頭するものが欲しいとき、本はいい。
何より本によって、人生観が変わる瞬間に立ち会える。
シャルマ氏はヘミングウェイに出会って救われたというが、
私はまだ人生探しというか、本探しというか、作家探しをしている状態というかだ。
でも、本棚に救いの神がたくさんいると思うとたのしい。

祈りでも本でも喫茶店でもいい

茶店を選ぶ時もおなじでいる。
今は、いろいろな喫茶店に、実際に訪ね自分のお気に入りを探している途中なのだ。
できるだけ多くの喫茶店の空気を味わってみたい。

 

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【2015年8月訪問】

東京都中央区東日本橋3-12-9 

【愛媛県:今治】COFFE 不二家 喫茶店のホットケーキ編

今日は、愛媛の〈不二家〉を紹介したい。

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同名の某洋菓子屋さんとは無関係のようだ。
かつて私の地元にあったレストランも、そういえば不二家という名前だった。
私の中で、不二家の名を冠する昭和食堂に間違いなし、と思っている。
ここ不二家さんのホットケーキは手作りだ。
プレーンでもじゅうぶん美味しそうなのだが、
遠出だと「せっかくだから」という気持ちが勝ってしまう。
だから小倉あん添えにした。このあんこも自家製らしい。

 純喫茶はリバーサイド

不二家〉は、かつての今治城のお堀の脇に建つリバーサイド純喫茶だ。
レースのカーテンのかかった大きな窓から、淡いブルーの水を眺めてぼんやりする。
至福の時間だ。喫茶店通いが好きなのは、日常から離れ、自分だけの時間を作ることができるからだ。
茶店に行くたびに気分が入れ替わる。
リラックスすると同時にシャキッとするから。
東京にいても、もちろん都内の喫茶店でじゅうぶん気分転換ができるが、
こうして遠くの街の喫茶店に出けば、それだけでじゅうぶん異次元級の気分転換だ。

船の街 今治

 タオルとか、某学園とか日本一長い滑り台とか。
今治にまつわる話はいろいろあれど、
造船業の町として、私にはなじみがある。
今治港の近くには、船を模した建物の中にカフェがあって、
屋上テラスからの眺めは抜群だった。それは確か11月の訪問だった。
潮風にあたりながら時の流れるまま、頭の中のごちゃごちゃした考え事を手放した。

人生夢だらけ

、船にゆかりのある愛媛県にはご縁があって1年に1回はくる馴染みの町になった。
いったのにまだまだ紹介していない喫茶店も、まだ訪問できていない喫茶店もたくさんある。これから楽しみだ。
『人生夢だらけ』という椎名林檎さんの曲を、年末の歌謡祭で聞いたとき、
本当にその通りだと思った。行きたい喫茶店がありすぎて、人生夢だらけだ。

 

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愛媛県今治市黄金町1-1-11

 【2016年11月訪問】

すでにご紹介済みの今治の喫茶店はこちら。

kissafreak.hatenadiary.jp

  

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【東京都:板橋区】ピノキオ 喫茶店のホットケーキ編

今日は板橋区ピノキオを紹介する。数年ぶりの訪門だ。
住宅地のマンションの一階に喫茶店があることが、もはや東京では珍しい光景だ。

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数年ぶりに東京に大雪が降った1月、まだ雪が残るとある日のことだった。
名物のホットケーキをめあてに、〈ピノキオ〉にきた。
生地は厚いが、小ぶりで可愛い二段重ねのホットケーキは、ペロリといけてしまう。
満席の土曜日、他のお客さんたちは、ホットケーキにナポリタン、ピラフやクリームソーダ、レモネードなどなど定番の純喫茶メニューを複数注文している人が多かった。
このお店の味が、間違いなく美味しいことの証明である。

読書をして、しばし時間を過ごしたあと、帰り際にカウンターの脇の可愛らしいホットケーキの形をしたオブジェを発見する。
思わず「可愛い!」と声をあげると、
「うちのホットケーキをモデルにしたんじゃないかって、お客さん持ってきてくれたの」という。
本当に似ていた。

 

さて世の中は平昌オリンピックの真っ最中だ。
フィギアスケートの羽生結弦選手が金メダルを獲得した。
羽生選手の華麗で完璧な世界観にうっとりする。
生身の人間であるということにビックリしてしまうほど、アニメの世界から抜けてきた王子様のようだ。

前回の〈ロミオとジュリエット〉もそうだったが、
BGMの旋律がアンニュイなヨーロッパ映画の雰囲気で、静かに強く美しい。

この時、最近読了した三島由紀夫の「幸福号出航」の一節を思い出した。

モンシロ蝶がいっぱい飛んでいた。潮風を吸い慣れた蝶。

(引用:三島由紀夫の『幸福号出航』)

羽生選手は氷の上を舞う蝶だった。本当に美しい光景で、心が安らいだ。

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バターで顔を作ってみたりした。

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東京都板橋区大山金井町16-8 

 【2015年9月他:訪問】

【東京都:茅場町】珈琲家 喫茶店のホットケーキ編

今日は茅場町の〈珈琲家〉を紹介する。
潔いシンプルなネーミングだ。
赤いソファが印象に残るホットケーキの名店である。

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食べきれなくてお持ち帰り。

 〈珈琲家〉という店名だが、その他のドリンクメニューも豊富なのだ。
ほかのメニューにも目移りしてしまう。
このときの私はホットケーキまっしぐらで、結局、オーダーはホットケーキとブレンドコーヒーという王道な組み合わせで落ち着いた。

ホットケーキがとても厚いことをすっかり忘れて、二枚オーダーしてしまったが、
食べきれない分はお持ち帰り可能だった。お家で美味しくいただいた。

ドリンクマニア必見映画。

さて、先日、『ウイスキーと二人の花嫁』という映画の試写会に行ってきた。

www.synca.jp

第二次世界大戦下、スコットランドの離島のお話で、
戦時下のストーリだから、歴史がわからないとついていけないかも、と思いきや、
その心配はなかった。
ウィスキーが生きがいの島民たちのほのぼのとした日常をえがいた映画で、この映画を見たら心が静まった。
海の風景と、パグパイプの音色に癒された。
何も考えず、ぼ〜〜っと画面を眺めているだけでも楽しめる映画だ。

貨物船SSポリティシャン号座礁事件

実はこの映画、大好きな船にまつわるお話なのである。
戦時下にイギリスからニューヨークに向け、5万ケースのウイスキーを積んだ貨物船〈SSポリティシャン号〉が座礁した事件が扱われている。
それで、この映画を見ることにしたといっても過言ではない。

霧が多いイギリスの風景が好きだ。
陰ある空気が、静かにひたひたと迫ってくる感覚。

俳優陣の衣装にも注目だ。
スコットランドタータンチェックの民族衣装を着た男性陣がのみものだし、
タイトルにもなっている”二人の花嫁”の普段着も、二人の部屋のインテリアも、
とても魅力的だった。

レモネードが飲みたい。

ウイスキーがテーマの映画なので、ウイスキーが飲みたくなるところだろうが、
私の場合、欲したのはレモネードだった。

作中、「レモネードを飲まないか」という台詞があります(字幕では”ジュース”と訳されていたが、原語ではレモネードと言っていた)。
スコットランドの離島民たちにとって飲み物といえば、ウイスキーかレモネードか紅茶のことなのだ。とおもったとたん、レモネードが恋しくなった。
劇中の紅茶のティーカップも素敵だったし、パーティ会場でつかわれていたウイスキーの銀の杯(さかずき)も可愛いな、と思いながら夢中で見た。
細部のこだわりもみごとだった。

船用語 ラッシング

ウイスキーの積みつけ気になった。貨物が崩れて破損しないよう、
然るべきもので固縛するのだが(それをラッシングと呼ぶ)、映像ではただウイスキーの木箱を、漠然と重ね積み上げていただけだった。
戦時中だから、とにもかくにも雑にでも積みこんで、量と早さを優先していたのか。
安全性は放っておかれていたららしい。ほんとうは固定しないといけないのに。
この映画を見て、こんなことを考えるのは職業病だろうか。
それにしてもウイスキーの積荷方法が気になった。

本作は、戦時下でも好きなものは譲らない島民の姿を描いている。
どんな辛い状況の中にあっても、ささやかな幸せを見つけて生きていく人々の物語だと思う。
すてきな人生哲学がえがかれた映画だった。

 

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東京都中央区日本橋茅場町1-6-2 桂昇ビル B1F

【2015年7月訪問】