純喫茶丸 8knot    〜喫茶店で考えた〜

2015年からの純喫茶訪問ブログ。純喫茶をはしごする船ということで”純喫茶丸”という船の名前がタイトルです。

【東京都:若松河田】カフェテラス 小島屋 喫茶店のホットケーキ編

きょうは、若松河田のカフェテラス小島屋を。

f:id:saria444:20171203150810j:plain

このホットケーキは美味しかった。かたちも綺麗だし焼きめもツヤツヤ。
銅板手焼きのものだ。懐かしい味。ドリンク付きで600円とは、どこぞのモーニング並みのお値段だ。お値打ち。こちらは平日のみの営業だ。

小島屋を訪れたころ、2017年の夏は田山花袋のエッセイ『東京の三十年』を読んでいた。本の中で、このあたりの大江戸線沿線のようすが書かれていたことを思い出しながら、信号機の標識”若松河田”の文字をぼんやり眺めていた。

.....そうした光景と時と私の幻影にのこっているさまとが常に一緒になつて私にその山の手の空気をなつかしく思はせた。私の空想、私の芸術、私の半生、それがそこらの垣や路や邸の栽込や、乃至は日影や光線や空気の中にちゃんとり込んで織り込まれているような気がした。(出展:『東京の三十年』田山花袋

書物に残った著名人の思い出は、それを読んだ者が心に思い浮かべることで、現代に蘇る。田山花袋が当時感じたような日陰や光線や空気の一部を、いまも感じることができるかもしれないとおもうと不思議だ。

田山花袋はこうも書いている。「今、目の前に行き交う人々の喜びや幸せの感情のやり取りは、その人の人生が終わることで消えていく。人の営みは儚くて愛おしい。誰かが覚えていてくれるかもしれないけど大切な想いは自分でしか持ち得ない。」(大意)そう記し、大いなる想像力で悲しんでいるようすだった。市井の人々のごく平凡な幸せの感情や、些細な感情のやり取りは泡のように消えていく。だからこそ普通のものに興味がわき、そこを離れがたい気持ちになるのだと。私はその気持ちに多いに共感する。そしてそこから離れがたい気持ちになる場所が、私にとっては喫茶店だ。
町に馴染む普通の喫茶店。普通の人々の時間の過ごし方である。小島屋ではそれを感じられてよかった。平穏だった。
私も、おおげさな感動や刺激的な日常を書き綴るのではなく、
ささやかな幸せの思い出、つまり喫茶店でのできごとを細々とブログに残せたらいいなと思う。

とうとう師走も半ば、2017年を振り返る時期となった。早い。今年もいろいろな喫茶店に足を運べて幸せだった。年末の締めの挨拶のようですが、今月も記事はまだまだ続く

 

f:id:saria444:20171203151012j:plain

f:id:saria444:20171203151154j:plain

f:id:saria444:20171203151425j:plain

f:id:saria444:20171203151315j:plain

東京都新宿区若松町32-1 プラザ小島屋 2F

【2017年8月訪問】

【東京都:八幡山】ルポーゼすぎ 喫茶店のホットケーキ編

今日は京王線 八幡山のルポーゼすぎを紹介する。
京王線の駅前すぐなのでみつけやすい。

f:id:saria444:20171203152600j:plain

8月の暑い日に訪問した。ショーケースの中のオレンジと黄色が爽やかだ。あの夏の日差しが恋しい。季節のフルーツのホットケーキ、8月はフルーツはマンゴーだった。甘いマンゴーソースと塩気のあるホイップバターの組み合わせが、本当に美味しかった。

ここのお店は毎月5.15.25日に、ホットケーキ150円デーを開催している。ドリンクのオーダーは必須。通常価格は550円。このサービスデーは、ホットケーキ好きにはもうお祭りだ。訪問した日は通常デーだった。せっかくだから贅沢しようと、季節のパンケーキを頼んだ。銅板で焼いたきれいな形のホットケーキ。つやつや。銅板で焼くとなんでこんなに美味しいのか。火の通りがいいからというのもあるが、生地がきれいな色に焼きあがるのもいい。

かき氷にも惹かれた。フレッシュメロン味が珍しい。オリジナルメニューが工夫があって魅力的だ。沿線の会社に勤める社員が選ぶ、オススメのお店として紹介されたこともあるようだし、店内外に雑誌の切り抜きがたくさんあり大人気のお店だ。カウンターに並んだサイフォン器具も壮観。マッチもあった。京王線はなかなか乗る機会がなく八幡山駅は初めて下車した駅だった。モーニングでもホットケーキがいただけるとのこと。機会があればモーニングも試してみたい。

f:id:saria444:20171203152707j:plain

f:id:saria444:20171203152807j:plain

f:id:saria444:20171203152932j:plain

f:id:saria444:20171203153106j:plain

f:id:saria444:20171203153151j:plain

f:id:saria444:20171203153931j:plain

東京都杉並区上高井戸1-1-11 京王リトナード八幡山1F

【2017年8月訪問】

【東京都:錦糸町】コーヒー専門店 トミィ 喫茶店のホットケーキ編

今日は錦糸町のトミィ。銅板で焼くホットケーキといえば、こちらが名高い。

f:id:saria444:20171205232733j:plain

青く澄んだ冬の空に昔ながらのレトロな看板が似合う。2月の出来事だった。
お店は月、日、祝休みでラストオーダーが16:30とのこと。平日にOLしていたら、なかなか訪問が難しいが、土曜日に訪問できた。土曜は混みそうだが、ここしか来れないから仕方ない。満席だったら待つつもりできた。幸運にもカウンター席になんとか滑り込み。ピークが過ぎるとポツポツと席が空き始め、その時常連さんがドアを開けた。
「先週は座れなかったものね。大人気ね〜」マスターとにこやかに話しながら席に座る。土曜日はフル回転なのかもしれない。いま思うと、カウンター席だと、目の前で焼かれるたくさんのホットケーキを眺められるので特等席だったかもしれない。

この日の注文は、日替わりサービスのストレートコーヒー(ブラジル)とチーズバーク。

甘い生地にチーズの塩気。このコンビネーションが最高。甘いものしょっぱいもの、甘いものしょっぱいもの、と交互に味覚の欲するまま自分を甘やかすスタイルだ。アクセントにシャキシャキとしたコーンの歯ごたえが最高。具がケーキとケーキの間に挟んであって、大きなハンバーガーのような感じ。

シンプルなホットケーキが一番ストレートに味わいが伝わってくるのだという理念をもちつつ、珍しいメニューがあればつい冒険してしまう矛盾があってもいいと思う。

ここはレトロなちいさな箱。カウンターと少しのソファ席で埋まるこじんまりとした空間だ。人との距離が程よいアットホームなお店。この感じ好きだ。私はライブでも大きなドームサイズの会場よりもライブハウスやホールサイズの中サイズの会場の方が好きだ。(できれば小さいキャパシティの方が嬉しい)大きい会場は派手な演出や大掛かりなセットがあったりと華やかでそれもまたいいが、中サイズの会場は程よい距離感で、汗や熱が伝わるような空気感がいい。そういう自分の嗜好は、大きな商業的カフェよりも純喫茶が好きだという気持ちに重なる。結局人が好きで、人を感じる場所に行きたいということか。欲するままの甘やかしスタイルな生き方でいいと思う。

 

f:id:saria444:20171205232831j:plain

f:id:saria444:20171205232759j:plain

f:id:saria444:20171205232818j:plain

f:id:saria444:20171205232824j:plain

f:id:saria444:20171205232833j:plain

f:id:saria444:20171205232839j:plain

東京都墨田区錦糸2-10-7

【2017年2月訪問】

【東京都:築地】コリント朝日店

今日は築地のコリント朝日店。

昨夜書いた記事の”地獄にホットケーキ”のフレーズが頭から離れず、脳内はホットケーキだらけだ。その浮ついた頭を落ち着かせるためにも、今日から喫茶店のホットケーキについて書こうと思う。

f:id:saria444:20170628132234j:plain

といっても、コリント朝日店のものは正確にはフルーツパンケーキ。とにかくホットケーキでもパンケーキでも、小麦粉が原料の柔かく生地を丸く焼いたケーキであれば、みさかいなく紹介していこうと思う。

おそらくコリント朝日店のこの生地の厚さは、私の中のパンケーキの定義に当てはまる。

①厚くて甘い生地なのがホットケーキ

②薄くて甘くない生地なのがパンケーキ

(諸説あります。)


*検証した時の過去記事貼っておく。

 

kissafreak.hatenadiary.jp

 

コリントのフルーツパンケーキは、季節によって彩りが変化するフルーツがたっぷりついてくる。この日はパイン、オレンジ、メロンにバナナにホイップクリームだった。シロップは3種類あって、はちみつ、メープルに抹茶のシロップでお口を飽きさせない。ドリンク付きで750円と、高パフォーマンス。ガラス張りの窓側の席で、オフィスビルを闊歩するスーツに身を包んだ人々を横目に、美味しい一皿を。眼福至福。

そういえばここから晴海埠頭に行けるはずだと思いたち、このあと都バスに乗り、終点晴海埠頭へ。東京港を散歩した。海風が強かったけど気持ちよかった!

好きな角度でビットの写真を撮り、大満喫の休日だった。

f:id:saria444:20171202232826j:plain

f:id:saria444:20170628132516j:plain

f:id:saria444:20170628132542j:plain

f:id:saria444:20170628134122j:plain

f:id:saria444:20170628134154j:plain

f:id:saria444:20171202232628j:plain

f:id:saria444:20171202232500j:plain

f:id:saria444:20171202232504j:plain

東京都中央区築地5-3-3 築地浜離宮ビル内2F

【2017年6月訪問】

【東京都:入谷】オンリー千束店

 今日はオンリーの千束店。オンリー三店舗のうち最後の紹介になる。各線浅草駅からも徒歩圏内だが(都営浅草線だとちょっと遠いかもしれない)、日比谷線入谷駅からもアクセスできる。都バスで浅草四丁目停留所で降りたり、浅草駅から歩くこともできる。

f:id:saria444:20170822004239j:plain

こちらではホットケーキをいただいた。これも純喫茶あるあるだが、注文したメニューが珍しいと、常連さんから歓声があがる。
「ホットケーキなんてあるのね?」
「珍しい注文ね。」
「ゆっくりして行ってね。」
常連さんもママ目線だ。最近某アイドルさんがこちらで撮影をしたようだ。
「最近きた女の子、そこで食べて行ったよ。記念に撮影していきな」という。そのことを存じ上げなかったが、壁に雑誌の切り抜きが貼ってあり、可愛らしい女の子が黄色いシロップのかき氷を食べていた。結局どなたなのか不明のまま。

ジャコブスラダー再び。

ここからは船のマニアックな話になるのでお好きな方だけ...。
最近「海辺のカフカ」を読了した。
ひとことで言うと、文化の参考書のような感じで。文豪、作曲家やクラシック音楽のこと、哲学、名フレーズが随所に散りばめられ、知識があったらさらに楽しめるだろうと思いながら読んだ。心に刺さる名言も多数あり、優しく心を撫でてもらったような、救われる瞬間もありました。いって見れば、雲の割れ目から陽の光が差し込んでくるような気持ちになる本。この雲の割れ目から陽の光が差し込んでくるという表現は何度か本書に出てくる。

雲の割れ目から差し込んでくる陽の光とは、天国から降ろされたはしごのメタファーだ。聖書のヤコブ天使の梯子の事。このヤコブ天使の梯子のことを、英語でジャコブスラダーと言う。

このブログを最初から読んでくださっている方はお気づきかもしれないが、船の専門用語にも”ジャコブスラダー”がある。

 

 
kissafreak.hatenadiary.jp

 

ジャコブスラダーとは、船の脇に吊るされた縄梯子の事で、パイロット(水先案内人)が海上の小舟から船に昇るために使用する。この名称は聖書の”ヤコブ(ジャコブス)の梯子”が由来なのだ。

人生の碇

海辺のカフカ内では、他にも

人生を

碇を失った船のよう

だとか、

恋する胸の痛みを

その痛みは碇となって、僕をここにつなぎとめていてくれる。

などなど。船にまつわるフレーズが随所に出てくる。
人生の舵取りなど、人生を舵で比喩するのはよく見るが、碇の比喩は新鮮だった。
船好きを自称するものとして、とても興味深く読んだ。船がある程度動かないようにするには、鎖の重さや海底の地質も大事だ。きちんとつなぎとめられているのであれば、鎖の重みも、碇と海底の地質との相性も良かったのだろうと、考えていた。少しマニアックだと思った。

しかし......

海の底ってどうなっているんだ?

という文章をのちに見た時は驚いた。村上春樹氏はしっかり海底のことにも言及している。見たことのない人に説明するのは難しいから、水族館にいって説明する場面もある。

二人で水族館に行ってみようぜ。

しかし、水族館にいくことは叶わなかった。海底の謎は解けなかった。でも本書のテーマは、”結論がわからず白黒つかない人生を歩むことについて”であると思うので、海底の謎があきらかにならなくても、それはそれで良い。

地獄にホットケーキ

それから喫茶店好きの私にとって、とりわけ好きなフレーズがこれだった。

『地獄にホットケーキ』

 

とても重い石をひっくり返すある場面にでてくる。唐突にホットケーキと出てきたので釘付けになった。さらに調べると”地獄に仏”ということわざをもじったのだとわかる。(ちなみに、地獄に仏の意味は、”困窮しているときの願ってもない助け”)

地獄でホットケーキを見たら、地獄に仏なのは確かだ。困った時の助け船のようなものだ。読んでいるうちにコーヒーが飲みたくなり、ホットケーキが食べたくなった。ホットケーキが自慢のオンリーの記事で『海辺のカフカ』の感想を書くのは、素敵な偶然だと思う。

 

f:id:saria444:20170822004307j:plain

f:id:saria444:20170822004336j:plain

f:id:saria444:20170822004410j:plain

f:id:saria444:20170822004439j:plain

東京都台東区浅草5-17-2

【2017年7月訪問】

【東京都:田原町】coffee オンリー 合羽橋店

今日はオンリー合羽橋店のはなしだ。

f:id:saria444:20171130160047j:plain

合羽橋道具街のユニオンコーヒーの角を曲がると、焙煎中のコーヒーの香りが漂う。
ひとめ惚れ必至の外観。合羽橋は月一程度で訪れるが、雑誌で紹介されるまで気づかなかった。通いなれた町で、未知の世界があると知るのが嬉しい。

店の前を過ぎると、長いこと愛用されたであろうレトロな機械でダイナミックに豆が焙煎されている。ついつい足を止めてしまう。外観はオンリー三店舗の中でも渋いイメージ。

田原町駅方面に少し歩くとパンのペリカンがある。最近映画にもなったので更に人気に拍車がかかったであろう。オンリー合羽橋店では、手に入りにくいペリカンのパンを使用している。浅草界隈はペリカンパンを使っている喫茶店が多数ある。10年以上前、ペリカンのパンを買いに行った時のこと。売り切れだったためお店の方に「近くでペリカンパンを卸しているお店はどこか」と訪ねたことがある。「たくさんありすぎて....」という答えだった。愚問だった。いまでは恋しくなったらすぐ行けるよう、ペリカンパンを使用している喫茶店は、幾つかリストアップしている。浅草ではオンリー、カリブ、フルーツパーラーゴトー。人形町ではロイド、喫茶去快生軒などなどがある。
ペリカンのパンはもちもちしていて美味しい。

オンリー三店舗の中でも、純喫茶紹介本にはこちらが取り上げられることが多い。オンリーロゴ入りのグラスとカップ&ソーサーもここで買える。奥の座席にはドラえもんが座っている不思議なゆるい空間だ。

f:id:saria444:20171130160144j:plain

f:id:saria444:20171203152148j:plain

f:id:saria444:20171130160336j:plain

f:id:saria444:20171203152317j:plain

f:id:saria444:20171130160452j:plain

f:id:saria444:20171130160611j:plain

f:id:saria444:20171203152416j:plain

 f:id:saria444:20171130160726j:plain

f:id:saria444:20171130160826j:plain

ペリカンのパンはこれ↓

f:id:saria444:20171130233630j:plain

東京都台東区西浅草2-22-8

【2015年10月訪問他】

【東京都:亀戸】純喫茶 サヴォイア *2017年10月ごろ閉店*

今日の記事は、亀戸の純喫茶サヴォイア。実はすでに閉店している。
訪問は2017年の夏だった。いつか記事にしようと思い、下書きにいれておいたが、
この流れが多くて本当に寂しい。

f:id:saria444:20170822010350j:plain

散歩の達人』2017年11月号(錦糸町・亀戸・大島特集号)が発売されたと同時期に閉店した。この特集にサヴォイアも取り上げられていたのだが。急なおしらせは、空のサンプルケースと、ドアの張り紙でわかった。

グリーンのふかふかのソファに希少な石材の壁。カウンター上のステンドグラス。最近ではめったにお目にかかれないタイプの純粋な喫茶店だった。手元には可愛らしいマッチがある。大事にしたい。

f:id:saria444:20170822010419j:plain

f:id:saria444:20170822010449j:plain

f:id:saria444:20170822010525j:plain

f:id:saria444:20170822010619j:plain

f:id:saria444:20170822010705j:plain

f:id:saria444:20170822010840j:plain

f:id:saria444:20170822010741j:plain

f:id:saria444:20171129012115j:plain

東京都江東区亀戸3-47-15

 【2017年8月訪問】

2017年11月頃 閉店