【東京都:阿佐ヶ谷】珈琲雨水*2017年8月31日閉店*
閉店のニュースを聞き、急遽記すことにした。阿佐ヶ谷の珈琲雨水だ。
阿佐ヶ谷という町は、北に南に星の数ほど飲食店がひしめくエリアだ。
特に北口は個性的な喫茶店がかねてより多くあり、かつ新しく生まれ続けているところだ。
カフェや、喫茶店だけでなく、ラーメン屋さんも印象深い。航海屋という現役航海士たちがこぞって喜んだラーメン屋さんの近くにある。
ここは多国籍で新旧の勢いがともに渦巻く商店街の2階にある。
階段を一段一段のぼるごとに、その喧騒が静まっていく不思議な吸引力を持つお店だった。
静かで読書に耽れるお店だが、阿佐ヶ谷はお祭り大好き!な町でもあるので、祭囃子がBGMなんていう日もあった。
珈琲もケーキもとても丁寧なつくりで、きっとこれからも阿佐ヶ谷で長い歴史を育んでいくのだろうなと勝手に期待していたので、閉店のお知らせはとても悲しい。
けれど、最近徳島県の鳴門海峡で目の当たりにした渦巻きには、かなり人生観が動かされた。
海や波の流れのように、今はある場所から離れても、いつかまた一つの渦になるという大自然の営みに、ただただ悠久を感じる。日々は泡沫のように消えていくが、ここで時を過ごした人の気持ちや、このお店での思い出はいき続け、いつかどこかで現れ、また一つの渦となり出会っていくのだろうと思う。
ここの本棚で出会った本たちは、波のように新しい思潮を私に連れてきてくれ、これからも数珠つなぎで縁を繋いでいくと思う。幾つかの一目惚れした本は、いまは私の本棚にある。
有名な”方丈記”のごとく、
行く河の流れは絶えずして
であるが、その水は何処かで流れていた水だ。別の何処かでまた出会う。
ここは、かつて元気のなかった私を見兼ね、『喫茶店が好きだと聞いた』からと連れてきてくれた畏友との思い出の場所だ。ここに一緒に来た人々や過ごした時間は、映像のように鮮明に残り、思い出す数だけいつまでも心の大海原で流れ続けていくことだろう。印象深い喫茶店だった。あと残り1週間...。
【2016年6月初訪問:他】