【愛媛県:松山市】マリモ
3月29日はマリモの日だという。
海の生物であるマリモが天然記念物に認定された日だ。
海にまつわる名前の喫茶店シリーズをお届けする。今回は〈マリモ〉だ。
愛媛県松山市にある喫茶店である。
本当に船内に入ったようだ。
マダムのご実家が、船のオーナーだったようで、蔵に眠っていた船からもってきたものを並べたらしい。実際に使われていた船用品である。
空想でしか知りえない、海洋小説の舞台のようだった。
『白鯨』や『老人と海』のような。
目ざとく見つけたのは、80年代をおもわせる思い出帳だ。
長いこと洋上で過ごし、久しぶりに陸にあがった船員さんらしく書き込みをたくさんみつけた。
そうか。ここは港町だ。ちかくに松山港があるからだ。
記された日付からこの日までを指折り数える。
あのころ20歳前後なら、いまも現役の船員さんかな?
それともすでにOBかな?もしかしたら、知り合いかもしれない(!)
思い出帳に残された昔の青年たちのメッセージを読みながら、ジャズを聞くのは至福だった。
私も書きこんでみました。1980年と2016年が交わった。
この店自慢の、音を吸収しやすいという石の壁が、珍しくてそればかり眺めていた【2016年11月訪問】
【愛媛県:今治市】早朝喫茶 マリン
早朝喫茶マリンは今治にある喫茶店である。
前回に続き、海にまつわる名前の喫茶店シリーズをお届けする。
今治港の極近くにある。早朝喫茶というカテゴリーがあると知ってから、
数年ほど訪問を温めてきた喫茶店だ。
好きなアーティストが、47都道府県をまわるツアーをしてくれて、
年2回ほど国内旅行を兼ねて飛行機の距離の町にくる。
優先は、思い入れがある県からだ。
今は、船にまつわる仕事をしているから、造船の町である今治はなじみがある。
愛媛の、特に今治にはずっときたいと思っていた。
そこでこの早朝喫茶を知ったのである。ますます来たくなる。
朝5:00からオープンしている。
東京でも築地市場にある喫茶店は、もっと早くから空いているお店があるが、この早朝喫茶という名称は独特だと思う。
愛媛の商店街はまだレトロさがあり、窓から見える景色も東京のそれとは違う。
窓越しにみる商店街の看板にうっとりする。
この飴色のソファもいい。
カウンターのたまごいろチェアも可愛く並ぶ。
マスターがカウンターに座り、せっせとゆで卵をむいていた。
いったい一日に何個むくのだろう。
大きな業務用のボールには、すでにゆで卵でいっぱいだ。
夕方まで開いているけど、早朝喫茶には早朝にきたい。
もとは朝は苦手なのに、モーニングを食べたいという気持ちが、
早起きを可能にする不思議。
厚切りのトーストに半熟のゆで卵のくみあわせである。
コーヒーのカップの薔薇は、ソ連や東欧のレトロ可愛さに似ている。
船員さんの木彫りの人形がある。袖にラインがいっぱい入っているからCAPTAINだ。
この置物はとても今治らしい。
この日のお供は『南蛮かんぬし航海記』(伊東昌輝:著)
昭和51年発行の本だ。神主さんの船旅のエッセイである。満喫しすぎ!
【2016年11月訪問】
【神奈川県 日吉】まりも *2017年12月20日閉店*
新丸子にも姉妹店があるが、新丸子が姉で、日吉が妹だ。
ここは昭和40年代にできたそうだ。
日吉は大学のある街で、老若男女が集っている。
勉強している学生や、韓流スターの話をする日吉マダム達がいて、
純喫茶のおっかけをしている私もいる。この日のお客さんは、こんな感じだ。
いい喫茶店は、すべての人を優しく受け入れてくれる。
コーヒーシュガー色のガラス扉がついた圧巻のショーケースがある。
ナポリタンを始め クリームソーダなどの王道メニューがある。
マッチもある。ファミレスがない時代のファミレスだったであろう。
マスターが優しい。
以上が、私の純喫茶の純度である。
まりもはとても純度が高い喫茶店だ。
セットサービスは11:00〜閉店までオーダーできる。
セットドリンクにソーダ水を選べるのも、ポイントが高い。
みてみて!ナプキンもオリジナルだ(持って帰った)。
私は海にまつわる名前の喫茶店が好きだ。〈まりも〉もそうである。
私は水の星座、かに座生まれだからか ”海”に強烈に惹かれる。
泳ぐのが好きなわけではない。マリンスポーツはできない。
ただ、海という存在が好きなのだ。
水を見ると落ち着く。
だから今日から少しずつ、海にまつわる名の喫茶店シリーズを更新する。
さて。今日のお供は、『世界の飛び地大全』だ。
この地球は空と海と陸地からなる。海が好きだからこそ、対になる陸(飛び地)についても興味がある。とことん好きな世界に浸った休日だった。
【2015年5月訪問】
【北千住】サンローゼ *2017/03/28 閉店
サンローゼは北千住にある喫茶店だ。
駅前の存在感ある建物の階段上がって2階にある。
はやる気持ちが制することができず、階段を一気に駆け上がる。
興奮が高まる。だって、こんな店構えの喫茶店は東京にはそうそうないから。
ガラスに描かれたアートも可憐だ。全てが美しい世界である。
マットの絵柄にもキュンとする。
贅沢に空間をつかい、客席数は250席もある。
その数、とある国際線の旅客機とおなじである。圧巻だ。
もうこのままみんなでお店ごとどこかに飛んでいきたい。この空間がなくなってしまうなら、違う場所にワープさせたい。
このアングルは、空港やホテルのラウンジにも見える。
だから、旅好きの私にとって、直感でわくわくする空間なのだ。
ミルクティー色のソファをバックにフルーツパフェを食す。
パフェの語源は、フランス語の“パーフェクト”だ。
これは、文字通り完璧なルックスのフルーツパフェである。
閉店を惜しみ、忘れないようにサンローゼでの思い出をスケッチしていたおじいさんや、このお店でプロポーズされたというエピソードを持つご夫婦もいた。
ここで決まった幾数の商談があったことだろう。
ランチに通ったOLやサラリーマン。
私のように最後に1回だけしか訪問できなかったけど、ずっとファンだった人。
大好きで通い続けた人。お客さんも店員さんも相思相愛である。
大事な絆でいっぱいの場所だった。心に刻みたい。
理想の世界で完璧なパフェを食したこの日を忘れないように。
【2017年3月訪問】
【向島】季節の生ジュースとくるみパンのカド
カドは向島にある喫茶店だ。生ジュースとくるみパンが売りの店である。
街角にあるこの外観がたまらなく可愛くて、思わず入りたくなる。
パセリとレモンがアクセントの活性生ジュースをいただいた。
しばし店内を満喫する。
舞台や映画のセットのようなインテリアもぬかりない。
360度体感型の喫茶店だ。インテリア設計は、志賀直哉氏の弟である直三氏によるものだ。美的感覚が揃った兄弟だ。
憧れる。
そして先代がその才能と旧知の仲だったということからも、
このお店の格が伺える。
二代目と思われる店員さんは、ビンテージ感溢れる装いだった。
衣装まで世界観が統一されていて感服する。
贅を尽くした喫茶店だ。1000円弱でこんなアートに触れられるなら満足だ。
この雰囲気に吸い込まれ、入店してきた外国人女性がいた。
くるみパンを買っていた。
私もつられてお土産にした。
【2015年10月訪問】
【新橋】パーラーキムラヤ
パーラーキムラヤは新橋にある喫茶店だ。
ニュー新橋ビルの地下一階にある。
ショーケースや喫茶メニューにインテリア。パーラーというネーミングが、
全て私好みだ。
まだ、ファミレスもなかった時代、覚えているショーケースは、
デパート最上階のレストランか、はたまた駅前にあった喫茶店か。
とにかくなつかしくて、ほっこりする。
永らくツイッターのアイコンにしているこのプリンアラモードは、最上のルックスである。人生最後に食べたい食べ物ときかれたら、プリンアラモードがいいかな、
いまのところ。
小さいころ喫茶店で父と食べた思い出と、家でも母が作ってくれた。
そんなストーリーをひっくるめると、プリンアラモードへの思いいれは深い。
喫茶店放浪記のふりだしだった〈キムラヤ〉である。
欲張ってミックスサンドも頼んだ。
辛子がガツン効いたサンドイッチだった。この味が、
これからの喫茶店サンドイッチのお手本になる。
クセになる味あじだ。
〈ニュー新橋ビル〉はいつまでそこにあるんだろうか。
またいかないと。
【2015年5月訪問】