純喫茶丸 8knot    〜喫茶店で考えた〜

2015年からの純喫茶訪問ブログ。純喫茶をはしごする船ということで”純喫茶丸”という船の名前がタイトルです。

【神奈川県 横浜】キャビン *舵のある喫茶店

今日は、横浜駅ビル地下にある〈キャビン〉を紹介する。

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鉄の鎧。
いろいろなものを入れても型が崩れない。
沈んだり、浮いたり、
なんとかギリギリの絶妙なふる舞いで、
崩れないからといっても、やたらと詰め込めば転覆する。
どこか港に立ち寄って、荷下ろししないといけない。
船の描写のようだが、私のことでもある。

横浜の喫茶店キャビンはここ最近のお気に入りの喫茶店だ。
舵があって、銅製のコースターが可愛い。
ここで、1週間分の肩の荷を降ろすとしよう。
アイスコーヒーを一杯たのむ。

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最近読んだ本は『解錠師』(早川書房 スティーヴ・ハミルトン 越前敏弥 訳)だ。
『解錠師』はハヤカワポケットミステリー版の装丁が好きだ。真っ赤な表紙に鍵穴から歯車。センスがいい。ジャケ買いじゃない、内容もいい。

私はアメリカの州に疎い。地図帳と格闘しつつ二巡目でやっとストーリーに追いつく。いや正確に言うと一巡でやめられず、すぐ二巡目をスタートしたかっただけだ。
この小説の終わりと始まりは無限ループできる。
主人公が解錠するのは主に金庫だ。
本書では金庫を女性と表現しているのが良い。
初期設定のまま放置しておく人、スペアを堂々と見せびらかし、本当に大事なものは別の場所にしまっておく人。ぐぬぬうまい。

一般的に、船も女性の代名詞として扱われているが、
尊重しないと海で荒れて大怪我するのは乗組員たちなのだ。
だから時々ドックに入れ、手入れをしたり、操船するときは丁寧にあつかう。

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トラウマで口がきけなくなった『解錠師』の主人公は、
ひょんなことから解錠の才があることを知る。
金庫の錠を開けるアーティストなのだ。錠への執着心や、解錠に成功した爽快感を彼以上に感じる人はいないだろう。
彼のトラウマと重ねるととても切ない。しかも彼の解錠における能力は天才的だ。
文字通り、潜ったから見つけ出した潜在意識なのだ。
深く深く。
やがて溢れそうな彼の悩みを救うのが、
いささか複雑な出会い方をした恋人のアメリアである。
このアメリアはマイクのマグダラのマリアだった。

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アメリアは人魚なのだ。
マイクはある日ー悪事に足を踏み入れる境界の日ー、風に髪をなびかせたアメリアの写真を見つけ、心奪われ、彼女のことで頭がいっぱいになる。
口がきけないマイクとアメリアのコミュニケーション手段は漫画を描くことだ。
互いにコマを書き連ねていく交換日記のような形をとる。
セリフに自分の気持ちを代弁させ、贈り合うのがなんとも瑞々しい。

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ある日、マイクはアメリアが人魚に変身した絵を描く。「人魚になりたいことをどうして知っているの?」とアメリア。
人魚といえば、リトルマーメイドのアリエルが想像しやすい。
リトルマーメイドはディズニーが意味深に、マグダラのマリアのメッセージを込めた作品だという。
マグダラのマリアは『ダ・ヴィンチ・コード』にも登場するが、『解錠師』お前もか。

マイクは悪事に苦悩していたが、そこに足を踏み入れなければアメリアに会えなかった。そればかりか、当のアメリアのためにさらなる泥沼にはまっていく.....。
しかし、アメリアはマイクの復活を見守るマグダラのマリアなのだ。
アメリアはまさに泥沼に飛び込みマイクを救う。
そういえばアメリアという名前はマリアに似ている。

マグダラのマリアは、
罪を悔いる人、身体に障がいを持つ人を救う女神だといわれている。

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本書内には、アメリカのベイエリアやクルーザーのシーンが出てくる。
船好きにはもってこいの本だった。

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神奈川県横浜市西区北幸1-1-8 エキニア地下1階

【2018年5月訪問】