【東京都:後楽園】名曲と珈琲 神田白十字 喫茶店の旅 丸ノ内線全駅制覇の巻その22*後楽園*
丸ノ内線 全駅制覇の旅のつづき。今回は後楽園駅だ。
といっても後楽園駅からは遠めだが、お許しを(願)
神田のヘブン
こちらのお店は、嵐の桜井翔さんがドラマロケで使用したそうだ。
ファンらしき方の姿はあまりなく、どこか教授然とした佇まいの紳士がコーヒーを嗜んでいた。
教会のような外観で、神聖な感じがして入店をいっしゅんひるむが、入ってみたらマスターが優しそうでホッとする。神保町と水道橋には、それぞれよく立ち寄るが、その間を歩いた機会がない。このお店の存在を永らく知らなかった。コーヒーパークっていう響きがいい。2階は団体向けのようだ。クラス会やゼミにどうぞということだが、ここで開催したら楽しそうだ。
オーダーしたパフェは、”ザ・喫茶店”という感じがする。
他のラインナップは、フルーツパフェ、チョコレートパフェ、キウイパフェ、ピーチパフェがあった。私のはピーチパフェだ。缶詰のフルーツというのも、それはそれでいい。
夏の夕方の儚さ
季節感のないものを頼んでいてこういうのもなんだが、日本は四季がある。
今年の夏もとても厳しかったが、暑い暑いといいながらあっという間に終わってしまいさみしい。夏の夕方が好きだ。19:00頃まで明るい。日中は暑くてたまらなくても、ジリジリした太陽がさがると、比較的涼しくなる。過ごしやすくなったねと言いながらスイカやとうもろこしを食べる夜が好きだ。夏休みに浮き足立っている近所の子供達が浴衣を着て盆踊りに出かけ出す時間だ。神社で夏祭りが開催されていると、屋台でかき氷やあんず飴が食べたくなる。線香花火は、誰のものが一番最後まで耐えるか、競争したことを思い出す。
夏生まれの私は夏が好きだ。だからいくら暑くても、1年で夏が来るのは嬉しい。テンションが上がって、興奮する。そして一日ごと、その日の太陽とお別れする夏の夕方には、楽しかったけど寂しい、という気持ちになる。
色々な色
今年の夏は四国旅行にいった。東京はネオンや看板や、電線といった、視界を遮るものが多いから、自然の色だけに支配される景色をみたくなる。とくに海に囲まれた四国や、瀬戸内海が好きだ。異国を色でイメージすると、イタリアは濃紺の空とそれに映える黄色い建物、フランスはマスタードイエローやパープルの組み合わせや、サーモンピンクなど少しくすんだ色を思い出す。ドイツはビールの麦色。イギリスは霧のグレー。香港や台湾は赤。そして日本といえば、夏の色だ。日本の夏は、畑や山の緑と、空と海の青と、入道雲の白がある。自然の色だけで支配される世界がとても好きだ。
桃と夏の色
日本では、気象現象に関する空の色の名前は実は少ないそうだ。
空は移ろい変わりやすいからあえて名付けなかったのだろうか。
逆に四季があるからこそ豊かになったのは、植物の色や染色技術に由来した色の名前だそうだ。一方、英語の空の色の表現は多彩で、アザーブルー、セルリアンブルー、セレストブルー、ヘブンリーブルー、スカイブルー、ホライズンブルーといったものがある。中国語では虹藍、海天藍などの言葉も美しい。
いま並べてみた言葉の中で、私が惹かれたのは、ホライズンブルーだ。水平線の空の色とは、海と空の境目がわからないくらいの青のことだ。ヘブンリーブルーというのも好きな響きだ。イタリアの宗教画に書かれる、天使と空の絵の澄んだ青色が思い浮かぶ。
夏生まれの私は夏の旬である、桃が大好物だ。ピーチパフェは最高のデザートである。生でも缶詰でも。桃という響きの思い出は良きものばかりだ。初物をいただくのは大事だという我が家の教え通り、初夏には桃を楽しんだ思い出がある。
教会のような白十字でいろいろなことを思い出した。ホライズンブルーとヘブンリーブルーの空の青のこと。桃の思い出がいっぱいの夏のこと。誰もが、生まれた季節が好きなのだろうか。
(参考書籍:「色々な色」光琳社出版)
【2015年9月訪問】