【東京都:入谷】オンリー千束店
今日はオンリーの千束店。オンリー三店舗のうち最後の紹介になる。各線浅草駅からも徒歩圏内だが(都営浅草線だとちょっと遠いかもしれない)、日比谷線の入谷駅からもアクセスできる。都バスで浅草四丁目停留所で降りたり、浅草駅から歩くこともできる。
こちらではホットケーキをいただいた。これも純喫茶あるあるだが、注文したメニューが珍しいと、常連さんから歓声があがる。
「ホットケーキなんてあるのね?」
「珍しい注文ね。」
「ゆっくりして行ってね。」
常連さんもママ目線だ。最近某アイドルさんがこちらで撮影をしたようだ。
「最近きた女の子、そこで食べて行ったよ。記念に撮影していきな」という。そのことを存じ上げなかったが、壁に雑誌の切り抜きが貼ってあり、可愛らしい女の子が黄色いシロップのかき氷を食べていた。結局どなたなのか不明のまま。
ジャコブスラダー再び。
ここからは船のマニアックな話になるのでお好きな方だけ...。
最近「海辺のカフカ」を読了した。
ひとことで言うと、文化の参考書のような感じで。文豪、作曲家やクラシック音楽のこと、哲学、名フレーズが随所に散りばめられ、知識があったらさらに楽しめるだろうと思いながら読んだ。心に刺さる名言も多数あり、優しく心を撫でてもらったような、救われる瞬間もありました。いって見れば、雲の割れ目から陽の光が差し込んでくるような気持ちになる本。この雲の割れ目から陽の光が差し込んでくるという表現は何度か本書に出てくる。
雲の割れ目から差し込んでくる陽の光とは、天国から降ろされたはしごのメタファーだ。聖書のヤコブの天使の梯子の事。このヤコブの天使の梯子のことを、英語でジャコブスラダーと言う。
このブログを最初から読んでくださっている方はお気づきかもしれないが、船の専門用語にも”ジャコブスラダー”がある。
ジャコブスラダーとは、船の脇に吊るされた縄梯子の事で、パイロット(水先案内人)が海上の小舟から船に昇るために使用する。この名称は聖書の”ヤコブ(ジャコブス)の梯子”が由来なのだ。
人生の碇
海辺のカフカ内では、他にも
人生を
碇を失った船のよう
だとか、
恋する胸の痛みを
その痛みは碇となって、僕をここにつなぎとめていてくれる。
などなど。船にまつわるフレーズが随所に出てくる。
人生の舵取りなど、人生を舵で比喩するのはよく見るが、碇の比喩は新鮮だった。
船好きを自称するものとして、とても興味深く読んだ。船がある程度動かないようにするには、鎖の重さや海底の地質も大事だ。きちんとつなぎとめられているのであれば、鎖の重みも、碇と海底の地質との相性も良かったのだろうと、考えていた。少しマニアックだと思った。
しかし......
海の底ってどうなっているんだ?
という文章をのちに見た時は驚いた。村上春樹氏はしっかり海底のことにも言及している。見たことのない人に説明するのは難しいから、水族館にいって説明する場面もある。
二人で水族館に行ってみようぜ。
しかし、水族館にいくことは叶わなかった。海底の謎は解けなかった。でも本書のテーマは、”結論がわからず白黒つかない人生を歩むことについて”であると思うので、海底の謎があきらかにならなくても、それはそれで良い。
地獄にホットケーキ
それから喫茶店好きの私にとって、とりわけ好きなフレーズがこれだった。
『地獄にホットケーキ』
とても重い石をひっくり返すある場面にでてくる。唐突にホットケーキと出てきたので釘付けになった。さらに調べると”地獄に仏”ということわざをもじったのだとわかる。(ちなみに、地獄に仏の意味は、”困窮しているときの願ってもない助け”)
地獄でホットケーキを見たら、地獄に仏なのは確かだ。困った時の助け船のようなものだ。読んでいるうちにコーヒーが飲みたくなり、ホットケーキが食べたくなった。ホットケーキが自慢のオンリーの記事で『海辺のカフカ』の感想を書くのは、素敵な偶然だと思う。
【2017年7月訪問】