純喫茶丸 8knot    〜喫茶店で考えた〜

2015年からの純喫茶訪問ブログ。純喫茶をはしごする船ということで”純喫茶丸”という船の名前がタイトルです。

【東京都:上野】カフェラパン 喫茶店のモーニング編 *船名〇〇丸の話

茶店のモーニングシリーズ。今日は上野のラパンを紹介したい。

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最近、雑誌の喫茶店特集で目にすることが多いラパン。来てみたかった。実は以前紹介した珈琲家さんの後にモーニングはしごしていた。
上野はなかなか来れないので、行けるときに行っておこうっという、
いわゆる貧乏性だ。

kissafreak.hatenadiary.jp

 ラパン うさぎが舞い込んだ異世界

大きな窓のある奥の席に通された。仕切りがあって半個室のようだ。お天気が良くて店先の手入れの行き届いた緑がキラキラ光っていた。気持ちいい。店員さんはほどよい感じで放っておいてくれるし、とても居心地が良かった。卵トーストは、ゆで卵を潰してマヨネーズで和えたものをトーストしたもの。とろっとしすぎず、卵の食感が残っていて絶妙だ。それに耳がハードタイプで美味しい。喫茶店のパンとしては、なかなか美味しい部類だと思う。

さて、最近船についての話題を書いていなかったので、これから書こう。
興味のある方だけお付き合いください!喫茶店で読んだ本からの船のあれこれだ。

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〇〇丸の由来について

今「随筆 船」(NTT出版)と言う本を読んでいる。昭和10年代の文章だが、書かれていることや問題提起などは、現代にも通ずるものがある。一つの章が5ページ程度で、エッセイが幾つかまとまった本だ。とても興味深い。商船の設計や速力、流線型、舵、トン数のことなどが綴られている。そこまで専門用語満載ではなく、比較的易しく書かれているから私でも読める。

特に興味を持ったのが”丸”という章だ。そもそも”丸”とはいったい何なのかということが書かれた章だ。日本船は〇〇丸という名前のものが多い。例えば、横浜に係留されている氷川丸や、練習船日本丸海王丸東京海洋大学越中島キャンパスに展示してある有形文化財 明治丸など。当ブログ名も”純喫茶丸”と名付けたし、船名”〇〇丸”の由来についてブログ記事内でも紹介しようと思う。

現在、日本の船に〇〇丸というものが多いのは、明治に制定された訓令”船舶取扱法手続き”内の条項に、”船名には丸とつけること”(意訳)とあるので、
長年の慣習で〇〇丸と付けられてきた。(ただし「平成13年の訓令改正で同条項は削除・廃止」

そこで「随筆 船」を確認してみると

古くは平安時代から○○丸という船名が文献で確認出来るという。ただしその起源が何であるかは諸説あり、中でも根強いのが以下のもの。

  • 『麿』の転用であるというもの。時代劇で自分のことを愛称のように”麿”と呼んでいる様子を思い出してほしい。それがやがて、敬愛の意味で人につけられるようになり、それがさらに愛犬や刀など広く愛するものにも転用された。例えば現代風に解釈すると、犬の名前に”コロ助”(コロ丸?)などとつけるのと同じようなことだ。親愛や愛情を込め、船にも”丸”をつけたらしい。この説はわかりやすいためか支持されているようだ。私もなんとなくこれは腑に落ちる。

 

  • 二つ目の説は屋号としての丸であること。(屋号とは商店や歌舞伎役者などの、家の呼び名。また、個々の家屋敷の通称)
    享保年間の書物に、その頃存在した問丸(*1)についての記述で『古くは家名を丸と呼ぶ。今の屋号である。つまり問屋を問丸と呼ぶ。だから船の名称を何丸と呼ぶ。基本は家名の屋号なり』(意訳)との記述があるようだ。屋号であるとすると、海上生活する人々にとって船は家、屋敷と同じものという観念だろうか。これも腑に落ちる。ちなみに問丸とは港町での海上物流を行う組織のことで、調べてみると以下のように書いてあった。

(*1)問丸-鎌倉時代から戦国時代にかけて問丸(といまる)は、年貢米の陸揚地である河川・港の近くの都市に居住し、運送、 倉庫、 委託販売業を兼ねる組織。問(とい)とも呼ばれる(出展:weblio)

  • 最後の説はお城を意味するものだということ。城郭のことだ。本丸、二の丸、丸の内など、お城を意味する地名はたまに現代でも耳にする。戦国時代の豊臣秀吉はある軍船の出来栄えを見て、「日本の出城・日本丸」と名付けたと言われてる。船は海に浮かぶ城(出城)であるから「○○丸」と呼ぼう。としたとする説。

以上、どれももっともらしい説だが、どれが起源かは判然としていないようだ。
”丸”がついた船の記述は、室町時代に”月丸”、足利時代に”御所丸””八幡丸”などが文献で認められており、専門の博士によると、その起源は鎌倉時代に起こったものであろうと推測されているようだが、未だ判然としていない、というのが結論だ。

 なぜ船に名前をつけなくてはいけないのか?という疑問があるだろう。
その答えは、戸籍とおなじように、船もしかるべきところに登録しなければいけないからである。

2017年現在、訓令改正により船名に丸をつけなくても良くなっている。でも現在でも、船名を訪ねる時に、いまだに「それ何丸?」と尋ねられることがよくある。
これは船会社あるあるではないだろうか。でも「本船名は?」と聞かれることの方が多くなってきた。

人も船の名付けも時代とともに....

人の名前にも時代の傾向がある。船に丸をつけなくて良いとしたのは新しい時代の流れだ。しかしながら、現在の船の名づけの傾向は、私の知る限り、地名や万葉集の歌などにちなんだ(丸なしではあるが)きちんとした由来がある名前である気がする。未だにキラキラネームの船には出会っていない。丸のあるなしは、女の子の名づけの”子”のあるなしに似ている気がしなくもない。丸をつけなくても良くなったといえども、丸がつく船名は、渋い響きでいい。(参考図書:「随筆 船」和辻 春樹(著) 野間 恒(編)NTT出版

【2017年9月訪問】

東京都台東区上野3-15-7