【岡山県:倉敷市児島】サンレモン＊夏の山陽＆四国旅行
これから少し、夏の山陽＆四国旅行の喫茶店の記事を書こうと思う。
まず1日目は、空路で岡山いりした。その後まっさきにお目当ての喫茶店へいく。
今回は喫茶店巡りがメインの旅ではなかったので、喫茶店めぐりは一日一軒が条件だ。かずある喫茶店のなかから、選りすぐった岡山のは、岡山県倉敷市児島のサンレモンだ。創業から50年以上だそうだ。
私のスイーツへの憧れの原点は、原宿の竹下通りにある。バブルのころ、アイドルがクレープ屋さんで、生クリームたっぷりの薄いパンケーキ生地のようなものを食べている姿をよくテレビでみた。愛読していた『明星』とか『平凡』でも、アイドルがクレープを食べていた。クリームチーズとチョコレートの組み合わせが合うんだ、と知ったのもそのころだ。当時、生クリームが苦手で、クリームチーズを使ったスイーツがあると知り感激した。原宿に連れていってもらったら、チョコレートチーズクリーム味をクレープを頼んだ覚えがある。
自動車道を進むと、レモンの大きなオブジェがみえてくる。これを見ただけで唾液腺が刺激される。建物は一見すると、郊外にあるドライブインのようだが、中はファンシーな喫茶店だ。これがまた、理想すぎるお店である。レモンの黄色と赤で統一された店内がすきだ。80年代に、原宿の竹下通りにどうしても行きたくて連れて行ってもらったクレープ屋さんや、NHKテレビ小説『あまちゃん』に出てきた、80年代に春子がアルバイトをしていた喫茶店を彷彿させる。懐かしい。細いジーンズに黒縁メガネをかけた女性店員さんが、丸いおぼんを胸に抱えながら、ホールと厨房を隔てるカウンターに寄りかかり、中の厨房の人と程よくおしゃべりしているさまもゆるくていい。昭和の古き良き喫茶店のイメージだ。それは、じっさいに訪れた喫茶店ではなく、記憶にある少女漫画やテレビの中の憧れの映像だ。昭和風に、と作り出したのではない、天然の遺産が今もあることに感激した。
先日の記事にも書いたが、今、田山花袋の『温泉めぐり』を読んでいる。その中で頻出する「懐かしい」という言葉がある。そこを離れがたいという意味で使われている。サンレモンにきて、まさにそんな気持ちになった。外は雨がぱらついていたが、 ガラスの壁と壁の間に水が流れているおかげで、外のせかいと内がわの境目が曖昧になり、不思議な心地になった。
赤いシェードの暖かいランプが並ぶ姿に惹かれる。80年代のファンタジーの世界だ。最高にファンシーな見た目のメニューを注文した。その名はピエロフラッペだ。フラッペという名前もいい。その色のせいでガチャピンにも見えなくもない。気の抜けた表情にに癒される。どこから食べようか迷いに迷い、顔の横あたりから崩れないようにすくった。そしてだんだんとピエロを細面にしていった。シャリシャリ、どんどんスプーンを入れていく。メロンシロップが体と心に溶け染み渡っていく。なんて美味しいんだろう。帽子に見立てた逆さまに突き刺さったアイスクリームも、ミルクの味がとても濃厚でキメが細かくて美味しかった。極限まで細くした顔も、だんだん崩れていき、帽子がずり落ちてくると、耳みたいに見えた。グレムリンのギズモみたいになってさらに可笑しい。
