純喫茶丸 8knot    〜喫茶店で考えた〜

2015年からの純喫茶訪問ブログ。純喫茶をはしごする船ということで”純喫茶丸”という船の名前がタイトルです。

【東京都:新大塚】エデン (ゑでん)喫茶店の旅 丸ノ内線全駅制覇の巻その23*新大塚*

丸ノ内線全 駅制覇の旅のつづき。今回は新大塚のエデンだ。
看板はカタカナ表記だが、マッチのロゴは「ゑでん」の表記だ。

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そういえば雨が似合っていた。

その日は雨だった。春は名のみでまだまだ肌寒い3月の夕方のこと。
駅からすぐのエデンに向かうだけなのに、雨が嫌だなぁと思ったわけだが、
いざ喫茶店に入ると、雨が降っているのも悪くないとも思う。
窓からみる雨模様は悪くない。
最近、瀬戸内海でみたカリフラワーのような夏の積み雲のことで頭がいっぱいの私は、喫茶店には雨が似合うという感情を忘れていた。

エデンのガラス模様は雨のカーテンに似ていた。外は本物の雨だけど、インテリアもが雨の模様だった。雨のカーテンに見えたのはブラインドだ。
本物の雨のしずくとグラデーションになっている。席にすわり、ピンクの電話が置かれたカウンター越しに、入り口の雨のカーテンを眺めると、とても穏やかな時間をすごせた。

髪結いの亭主を彷彿

このインテリアは床屋さんを彷彿とさせる。

以前、パトリスルコントの映画にはまっていた時があった。その時見た『髪結いの亭主』は好みだ。主人公アントワーヌは、初恋の相手が床屋さんの夫人である。
床屋の夫人が、こういうカウンターでお客さんを待っている。主人公は彼女に髪を洗ってもらったときにふと漂った芳しい香りのせいで、すっかり恋に落ちてしまう。その恋は成就しなかったが、2番目に好きになった人と結婚する。
フランス映画は静かに人の心を語るので好きだ。

日常に馴染む奇跡の喫茶店

ゴブラン織りの壁に、グリーンのソファにピンクの電話とガラスの扉。それと〈純喫茶〉という看板が完璧だ。ただ座っていたい、この雰囲気に囲まれていたいと思える貴重な喫茶店だ。好きな純喫茶をTOP10を選ぶ権利がわたしにあったら、エデンをまずあげる。勉強している学生や、どうやら保険の勧誘をしている風な女性と男性がいたりする。ひとの気の流れがある喫茶店が好き。新大塚駅はこの時初めて下車したが、新大塚だからこそこういう喫茶店が残っているのかもしれない。エデンは奇跡的に、外観もインテリアも究極にいい状態で残っている。どうかこのままでいてほしい。......ダイナミックに街を変貌させようとか、そういう思惑から遠く離れた街でありますように。

今度は晴れの日に行ってみたい。晴れの日にエデンにいったら、どんな思いがよぎるのだろう。

ここはプリンが美味しい。手作りの蒸した硬いタイプだ。かぼちゃのケーキも食べてみたいし。絶対にまたくる。大塚や新大塚は、ほかにも商店街が活きていて、もっと時間をかけて散策してみたい。なぜか夜に来ることが多いが、今度は太陽のもとで何かを感じに来ようと思う。

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東京都文京区大塚4-52-5

【2017年3月訪問】

【東京都:夏氷 かき氷のお店 その① ふわふわ氷編】まとめ 4選 

丸の内線全駅制覇の旅は、今日は休憩する。

7月25日はかき氷の日だ。だから、今日はかき氷のお店4選のまとめ記事をお送りする。純喫茶ではないが、季節感あるお休み処の情報として、書こうと思う。
今回のその①では、ふわふわなかき氷編だ。なんで7月25日がかき氷の日かというと、その昔、かき氷は夏氷とよばれていて、な (7) つ(2) ご(5) おり、の語呂合わせからきたそうだ。

十条:だるまや餅菓子店

1軒目は、だるまや餅菓子店だ。十条の甘味屋さんである。かき氷のシロップに尋常ではないこだわりを見せるという、かき氷職人が作るシロップは、どれも追求しすぎで嬉しい悲鳴をあげたい。少し前まで、都内で天然氷のかき氷が食べられるお店は珍しかったが、今は結構増えてきた。だるまやは、天然氷かき氷をはやくから提供してきたお店だ。先ほど店のツイッターを見たら、羽田空港にいます。今から福岡行きの最終便に搭乗します」とつぶやかれていた。シロップ用の果物を買い付けるようだ。シロップのためならどこへでも。自ら現地に出向き、目利きし、納得したものを出すのだ。こういうこだわりが好きだ。

 「そうだ、氷食べたい」って気温になる頃には混むだろうと思い、5月に訪問した。頼んだのは、宇治金時練乳抹茶の天然氷バージョン純氷バージョンもあります)。抹茶がとにかく濃い。抹茶の素材を堪能するためのシロップなので、甘さがない。「抹茶が苦手な方はご遠慮ください」と書いてあった。茶道で点てるお抹茶を、さらに凝縮した感じだ。抹茶抹茶抹茶です。私も、かつては氷に1000円以上出す?と思っていたが、これには、出す。出しても構わない。抹茶の濃厚な苦み、とあんこと練乳の甘み、店主のこだわり全てに敬意を払いたい。結構なお点前だった。だるまやさんのかき氷は、もう別ジャンルの食べ物だ。こだわりは細部にまである。

【だるまや餅菓子店】

東京都北区十条仲原1-3-6

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東京:ヨックモック ブルーブリックラウンジ 東京駅一番街

続いてはヨックモックのカフェでいただけるかき氷だ。とちおとめのシロップだった。日光の四代目徳次郎の天然氷である。天然氷は密度が濃く、細かく削れてふわふわになり、且つ溶けにくいとのことらしい。この綿菓子のようなふわふわ感がすばらしい。とちおとめのシロップは、甘くて酸っぱくてとろりとしている。練乳をかけるとショートケーキみたいな味になる。サービスでヨックモックが1本ついてくる。ヨックモックのかき氷を、ずっと食べたくて、今年の誕生日にケーキの代わりに食べにきた。散々お祝いをしてもらったので、ご馳走はもういいか、とも思ったがかまわない。誕生日はいつも以上に自分を甘やかす。シロップをかけ、上から見ると花束のように見えた。甘いものを食べると、あたまの中もお花(畑)になる。これで元気になるなら安いものだ。燃費がいい。

かき氷をいただけるのは、ヨックモック東京駅一番街店と、BLUE BRICK LOUNGE青山店、青山売店だけだそうだ。コースターも欲しかったので、ちょうど良い機会だった。

ヨックモック ブルーブリックラウンジ東京駅一番街店】

東京都千代田区丸ノ内1-9-1 東京駅1番街 B1F

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浅草:浅草浪花家

メンズみるくといろいろなものが入ったあんこ 780円
(各種ナッツ、コーヒー味のみるく、ココア *こしあん白)

こ...これは....かき氷というジャンルなのでしょうか!!感動している。最初はティラミス、続いてコーヒーぜんざい、その次は氷コーヒー、最後にコーヒーミルクセーキに変身していく。ナッツがひまわりの種とか、健康によさそうだし。メンズという名称はなぜなのだろうか?男性が頼みやすいように??みるくがひらがななのが絶妙だ。平日の昼に伺ったので、行列は前に2組目だけだった。休日は並ぶのだろう。

かき氷の種類によって、グラスが2種類使い分けられているだが、これは胴が高いタイプだった。中に具が詰まっている。とてもボリュームがある。大きくて飽きてしまうかも、と思いきや、全然そんなことない。中に白あんが入っている。白あんは氷の色と同化して気づかなかったので、急に甘いところが出てきてびっくりした。たいやき屋さんだからあんこが美味しい。麻布十番の有名店、およげたいやきくんのモデル、浪花屋の暖簾わけのお店だ。

【浅草浪花家】

東京都台東区浅草2-12-4

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巣鴨:かき氷工房 雪菓

ここは巣鴨とげぬき地蔵で有名な高岩寺のすぐ裏手にあるお店。カレーうどん古奈屋さんのお隣、少し脇道でノボリも控えめだから見つけにくいかもしれません。でも行列が目印。巣鴨に美味しいかき氷屋さんがあると噂に聞いてから、いつか来たいと心待ちに。7月25日がかき氷の日と知り、やっと吉日が来ました。平日で少し天気も怪しげだったし、ものすごく暑い日よりも穴場日かもしれない、と。

巣鴨とげぬき地蔵のお祭りは4のつく日なんですよ。今日は25日だから空いているだろうと思いましたが、とげぬき地蔵通りは結構な人出が。そうか、土用丑の日だから、みんなうなぎのお店「八つ目 にしむら」さんが御目当てなんですね。にしむらは亡くなった祖父が好きなお店でした。人生の最終期はほとんど入院していたのですが、もう無理には治療しない方がいい...とお医者さんが決めて自宅療養していた時、ここの鰻をみんなで食べました。「うまいうまい」と喜んでいましたが、それが祖父の最後の鰻に。好きな鰻をみんなで食べられて良かったね。巣鴨は思い出の地です。祖母と4に付く日によくとげぬき地蔵に来ましたしね。そんな思い出の巣鴨にある雪菓。

ここでは安納芋のかき氷を。プラス50円の天然氷で。こんな感じで氷の上がテクスチャーの固いシロップで覆われているかき氷は人生初。すごい.....この重量にも崩れない天然水の密度!このかき氷も最後まで飽きずに食べられます。徐々に食感が変わっていくかき氷。

最初は冷たい芋ようかん、続いて黒蜜をかけてぜんざいのように。最後は全部をよ〜〜く混ぜてスイートポテト味のミルクセーキのようでした。メニューに注意書きで「今年は天然氷があまり取れなかったので、天然氷にすると少なめになります。」という趣旨が書いてありましたが、少なめでこの量ですか!!すごい!充分ですよ。お値段 800円でした。天然氷は通常の氷より温度が高いから頭がキーーンとならないらしいけど、私は勢いよく食べるからか、天然氷でも鼻や頭が少し痛くなります。だから次のオーダーは純氷でもいいかもしれない。氷の違いが..わからない....繊細でなくてごめんなさい。それでも美味しく楽しめると思います。だってシロップが美味しいから。他にはイチゴレアチーズが気になりました。あまり暑くない日にまた行こう。暑い日は混みそうだから。ここのお店、特筆すべきは、店員さんが皆さん感じ良いこと。人気店なのに擦れていない。気さくで、純氷のように純粋なお嬢さんがいて、これはまた来たくなる!と思いました。甘いもののお店は、優しい店員さんがいてくれると更にほんわかした気持ちになりますよね。いたるところにあるネコのぬいぐるみがさらにゆるい優しさを感じさせます。

【かき氷工房 雪菓】

東京都豊島区巣鴨3-37-6

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その②もまた書きますので、どうぞご覧くださいね。

【2017年初夏〜夏訪問】 

 *その②、書きました。⬇︎

kissafreak.hatenadiary.jp

 

 

【東京都:後楽園】名曲と珈琲 神田白十字 喫茶店の旅 丸ノ内線全駅制覇の巻その22*後楽園*

丸ノ内線 全駅制覇の旅のつづき。今回は後楽園駅だ。
といっても後楽園駅からは遠めだが、お許しを(願)

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神田のヘブン

こちらのお店は、嵐の桜井翔さんがドラマロケで使用したそうだ。
ファンらしき方の姿はあまりなく、どこか教授然とした佇まいの紳士がコーヒーを嗜んでいた。

教会のような外観で、神聖な感じがして入店をいっしゅんひるむが、入ってみたらマスターが優しそうでホッとする。神保町と水道橋には、それぞれよく立ち寄るが、その間を歩いた機会がない。このお店の存在を永らく知らなかった。コーヒーパークっていう響きがいい。2階は団体向けのようだ。クラス会やゼミにどうぞということだが、ここで開催したら楽しそうだ。

オーダーしたパフェは、”ザ・喫茶店”という感じがする。
他のラインナップは、フルーツパフェ、チョコレートパフェ、キウイパフェ、ピーチパフェがあった。私のはピーチパフェだ。缶詰のフルーツというのも、それはそれでいい。

夏の夕方の儚さ

季節感のないものを頼んでいてこういうのもなんだが、日本は四季がある。
今年の夏もとても厳しかったが、暑い暑いといいながらあっという間に終わってしまいさみしい。夏の夕方が好きだ。19:00頃まで明るい。日中は暑くてたまらなくても、ジリジリした太陽がさがると、比較的涼しくなる。過ごしやすくなったねと言いながらスイカやとうもろこしを食べる夜が好きだ。夏休みに浮き足立っている近所の子供達が浴衣を着て盆踊りに出かけ出す時間だ。神社で夏祭りが開催されていると、屋台でかき氷やあんず飴が食べたくなる。線香花火は、誰のものが一番最後まで耐えるか、競争したことを思い出す。

夏生まれの私は夏が好きだ。だからいくら暑くても、1年で夏が来るのは嬉しい。テンションが上がって、興奮する。そして一日ごと、その日の太陽とお別れする夏の夕方には、楽しかったけど寂しい、という気持ちになる。

色々な色

今年の夏は四国旅行にいった。東京はネオンや看板や、電線といった、視界を遮るものが多いから、自然の色だけに支配される景色をみたくなる。とくに海に囲まれた四国や、瀬戸内海が好きだ。異国を色でイメージすると、イタリアは濃紺の空とそれに映える黄色い建物、フランスはマスタードイエローやパープルの組み合わせや、サーモンピンクなど少しくすんだ色を思い出す。ドイツはビールの麦色。イギリスは霧のグレー。香港や台湾は赤。そして日本といえば、夏の色だ。日本の夏は、畑や山の緑と、空と海の青と、入道雲の白がある。自然の色だけで支配される世界がとても好きだ。

桃と夏の色

日本では、気象現象に関する空の色の名前は実は少ないそうだ。
空は移ろい変わりやすいからあえて名付けなかったのだろうか。
逆に四季があるからこそ豊かになったのは、植物の色や染色技術に由来した色の名前だそうだ。一方、英語の空の色の表現は多彩で、アザーブルー、セルリアンブルー、セレストブルー、ヘブンリーブルー、スカイブルー、ホライズンブルーといったものがある。中国語では虹藍、海天藍などの言葉も美しい。

いま並べてみた言葉の中で、私が惹かれたのは、ホライズンブルーだ。水平線の空の色とは、海と空の境目がわからないくらいの青のことだ。ヘブンリーブルーというのも好きな響きだ。イタリアの宗教画に書かれる、天使と空の絵の澄んだ青色が思い浮かぶ。

夏生まれの私は夏の旬である、桃が大好物だ。ピーチパフェは最高のデザートである。生でも缶詰でも。桃という響きの思い出は良きものばかりだ。初物をいただくのは大事だという我が家の教え通り、初夏には桃を楽しんだ思い出がある。

教会のような白十字でいろいろなことを思い出した。ホライズンブルーとヘブンリーブルーの空の青のこと。桃の思い出がいっぱいの夏のこと。誰もが、生まれた季節が好きなのだろうか。

(参考書籍:「色々な色」光琳社出版)

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東京都千代田区西神田2-1-14

【2015年9月訪問】

【東京都:本郷三丁目】ボンナ 喫茶店の旅 丸ノ内線全駅制覇の巻その21*本郷三丁目*

 丸ノ内線全駅制覇の旅のつづき。
今回は本郷三丁目駅から徒歩10分程度にあるボンナだ。少し駅から離れるがお許しを(願)。
丸ノ内線よりも、南北線東大前駅からの方が距離は近いが、私は毎回本郷三丁目駅からくる。

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インテリアに包まれる喫茶店

 ミッドセンチュリーのインテリアがある程よくコンパクトで静寂な空間だ。
すぐにその雰囲気に溶けていく。この街は全体的に閑静だ。
東大の周辺には研究に使えそうな古本屋さんや、純喫茶のような一軒家が多い。
この喫茶店は、知性という名だ。知性の街にとても似合うと思う。
創業は昭和30年ごろという老舗だ。時代にあわせて変わることができる柔軟性も知性の一つだろう。入り口付近にあるカウンター席は、一人客がパソコンを利用しやすいようにと、最近改築したらしい。

東京でここまで時代を閉じ込めた空間はとても珍しい。照明の仄暗さや、お店の大きさとマスターの佇まいが絶妙に合っているのだろう。

吉本ばななさんの『人生の旅をゆく』

最近、吉本ばななさんの『人生の旅をゆく』という本を読んだ。

47章からなる読みやすいエッセイだ。旅紀行でもあるが、ばななさんの記憶をも旅している。懐かしいこと、大切にしたいことや、なくなってしまったものへの思い出がとても温かい。

私はこの日、諸事情で役所に行ったが、気づいたら1時間30分も順番を待っていたようだ。夢中でこの本を読んでいたら、そんなことすっかりどうでもよくなった。

この中では、とく、「もずく」という章が好きだ。

私たちは死ぬときにお金も家も車も恋人も、何も持っていけない。自分が着ている洋服も指輪も、何一つ持っていけないのだ。持っていけるのは、もう持ちきれないほどになっている思い出だけだ。悪い思い出もきっとあるだろう。
でも、それはきっと死ぬときは良い思い出に変化しているだろう。
そして良き思い出をたくさん創ることだけが、人生でできることなのではないか、そう思う。(出典:『人生の旅をゆく』吉本ばなな NHK出版)

 

とくに遠くに行かなくても、特別なことをしなくても、身近な人や、友人や家族、愛するペットと、いまこの瞬間にどれだけ豊かな時間を過ごすかや、 向いていることを精一杯取り組んで誠実に生きることが大事だと、そう言われた気がした。非日常の旅との対比で、日常の人間同士のささやかな営みが、とても贅沢ということを教わった。

もずくもずくもずく

もずくの香りで友人との思い出がよみがえってくるお話、「もずく」の章で、もずくのパスタの作り方が出てくる。これがとても美味しそうなのだ、早速作ってみた。

もずくとニンニクとゴーヤーをさっと炒めてパスタに和えて醤油で味付けし、パルミジャーノチーズをかけて食べるだけ(出典:同上)

東京は、本当に湿度が高く、真夏日がつづく。夏の旬は、体が欲しがる味だった。この沖縄素材づくしのパスタは本当に美味しかった。パルミジャーノがなかったのでとろけるチーズをのせ、火を止めて余熱で溶かす。本は〈旅する箱〉なので、自分も本の中に入り、主人公になってその時代や背景を旅する気分になる。だからもずくの章を読んだ私は、すっかりもずくをたべる準備ができていた。


旅にでて、良き仲間と思い出をつくるのもいいものだ。なかなか頻繁には無理だから、私は、喫茶店でインテリアに溶け込むか、本の中に溶け込む。そんなささやかな日常で、よき思い出を今日もつくる。

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東京都文京区本郷6-17-8

【2015年7月訪問、他】

 

【東京都:御茶ノ水】画廊喫茶ミロ 喫茶店の旅 丸ノ内線全駅の制覇の巻その20 *御茶ノ水編*

 丸ノ内線全制覇の旅のつづき。今回は、御茶ノ水駅近くの画廊喫茶ミロだ。
訪問順でいうと、喫茶店巡りを開始してから、片手で数えられる段階できた。

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◯◯してミロ〜〜!

三島由紀夫氏も訪問したというミロ。画廊喫茶だから、画家のミロから名付けたのかとまず思う。店内にもミロの絵があるし、それも由来の一つなのだが、もう一つストーリーがある。
「飲んでミロ、来てミロ、入ってミロ」という語呂合わせからきているという。
そのユーモアに惹かれた。同時に「やってミルク♪」というフルーチェのCMを思い出した。

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ロマンってそもそもどういう意味?

 細い路地の途中に入り口があり、知らなければ素通りする場所にある。最近は喫茶店巡りが好きになり、看板を探すようになったので、街歩きが楽しい。周りは似通ったチェーン店の看板がならぶなか、なぜかこのお店の看板はほかとはちがうオーラがする。目に飛び込んでくる。

このお店にも通った三島由紀夫氏は、船や少年の冒険といったロマンを小説で描いている。同世代の北杜夫氏も同様のテーマが多い気がするが、その当時の流行というよりはいつの時代でも共通のテーマなのだと思う。

ロマンというのは抽象的な言葉なので辞書を引こう!

ロマン「①小説、散文の物語。多くは長編②ロマンティックな事柄、気持ち」(出典:岩波国語辞典 第五版)

では、散文とはなんぞや。

散文「定型や韻律を持たない普通の文章⇄韻文」(出典:同上)

韻文とはなんぞや、

「①響。音の出だしに続いて聞こえる部分。音色〈余韻、哀韻、音韻、松韻〉②略③文学上、同一または類似の音韻を文中の定まった位置に繰り返すこと。〈韻をふむ〉「韻律、押韻、頭韻、脚韻」(出典:同上)

辞書の中の言葉がはっきり理解できないから、 次々と辞書をひいていく。

結局、
ロマンとは、ロマンティックな事柄や気持ちのことを指すようだ。

で......そ その......ロマンティックの意味も知りたい。

ロマンティック 「現実の平凡さ、冷たさを離れ、甘美で空想的、情緒的または情熱的である様」(出典:同上)

たかが小説を読むのに、こんなことまでするのかと思うだろうが、

同じように、わからない言葉を延々と辞書で調べて深みにはまるシーンが、
北杜夫の『船乗りクプクプの冒険』に出てくるのだ。

子供の時好きだったこと

私は思い出した。幼少期に、本を読ん、わからない言葉を辞書で延々と調べていくのが好きだった。知らないことを調べるのに夢中になる。辞書の説明文の意味がわからず、その意味をまた調べていく。辞書のページからページへ、と言葉をネットサーフィンのするように永遠に遊んだ。

同書の、辞書で調べ続けるシーンをみつけたとき、
なんと懐かしい気持ちになったことか。
言葉を大切に扱いたいと思う気持ち、それが私の純粋な気持ちかもしれない。

「本に書いてあることをそのまま暗記するだけではいけない、覚えることよりも自分で考え出す方がずっと大切だ。
しかし考えるためにはまず最小限度のことを覚えなければならない。
最小限度という言葉がわからない人は、さっそく字引を引いてみると。」(出典:北杜夫「船乗りクプクプの冒険」集英社文庫

北杜夫は本職は外科医でありながら、海の世界で働いたことがある。『どくとるマンボウ航海記』をかくきっかけとなった船医としての経験がある。
水産庁の調査船、照洋丸に1958年に乗船した後、1960年に『船乗りクプクプの冒険』を書いているので、同書は、北杜夫の船上での経験が反映されている。

エンドレス辞書引き

商船学校や海員学校など、専門の学校で勉強をしない限り、海の専門用語は素人には難しいと思う。海と陸は言葉が違う。むしろ海で言葉がうまれたのが先で、海で誕生した言葉が陸に転用されているのだ。でも現代はまるで逆のような扱いになっている海の用語は、陸では出あわないことが多数ある。
私にとっても、ほとんど外国語のようなものだった。もしくは大人の会話が理解できない赤ちゃんのように、職場の会話が理解できない時期があった。中途で素人の私が初めて船の世界に入った時、ほとんどの場面で辞書をひいた。

北杜夫氏もきっと船上で未知の言葉に出合い、その都度辞書をひきながら奮闘していたのではないか想像する。世界を理解したい、考えたい。でもそのためには共通認識を得なければいけないと。

奮闘と表現したが、逆にそれは充実して楽しいことでもある。


「そもそも」とか、「なんで?」と考えることは、とても面白い。エンドレスに辞書をひくこと、私にはその作業が面白い。
未知の言葉を自分の言葉にしていく過程がすきだ。

北杜夫氏もそんな気分だったのかと想像すると、この小説は他人事でなく、フィクションでもなくなってくる。自

今でも、夢中になることって、実は子供の頃に好きだったことなのではないか。忘れかけていたが、そういえば好きだった、ということを思い出すと、温かい気持ちになる。この本は私に大事なことを教えてくれた一冊だ。

平凡から離れたい時に行ってミロ

茶店の看板やインテリアを見て心踊るのは、私にとってはロマンだ。現実の平凡さを離れたいという気持ちがある。東京の平凡から。平凡から離れたくてロマンを求めて喫茶店に行くのだと思う。

辞書で調べ続けることと、読書と、喫茶店訪問と。好きなものをあげると、一見バラバラのようだが、同じ根っこがあるな、と思う。

ミロのメニューは興味がひかれる。注文したのは、スパゲティミラネーズというメニューだが、ナポリタン以上にイタリアの人に「???」という顔をされそうな名称だ。フルーツが添えられ、彩りも豊かでスパゲッティ版お子様プレートのようだ。
店内は一度改装されているが、いろいろと平凡から離れられるお店。平凡から離れないと近づけないもの。それが、今の時代は人情なのかもしれない。

平凡に疲れたら是、非ミロに行ってミロ♪

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 東京都千代田区神田駿河台2-4-6

【2015年5月訪問】

【東京都:淡路町】珈琲 ショパン 喫茶店の旅 丸ノ内線全駅制覇の巻その19*淡路町*

ショパン神田須田町の喫茶店東京メトロ丸ノ内線淡路町駅か、
都営新宿線小川町が最寄り駅だ。淡路町といえば池波正太郎さんを思い出すが、
この界隈は老舗の建物が多く、雰囲気がとても良い。
外国からの友人が東京観光したいといったら、この界隈を案内するようにしている。 

 

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茶店好きにも、この周辺は丁度いい。いい喫茶店がギュギュッと凝縮して存在してる。行きたいお店リストをアイフォンのメモに書き留めているが、
情報が増えるにつれ、消化しないと落ち着かなくなってくる。
早く現物を見たくて、ウズウズするのだ。

そのウズウズを解消するには、やはり行くしかない。
神田辺りは、このウズウズ症候群解消にぴったりの街だ。
茶店が多く、一気にはしごができるのだ。
駅で言うと、淡路町、小川町、御茶ノ水、神保町、本郷三丁目などなどがこの徒歩圏内にある。徒歩でなくとも、地下鉄の乗り降り自由な一日券を買えば便利だ。

どちらかというと必要のないことを書こうと思う。

最近北杜夫さんの本に嵌っているが、『どくとるマンボウ航海記』のあとがきにこんな趣旨の事が書いてあった。

どちらかといえば書く必要のないものを書いていこうと思う
ガイドブックのようなものより、必要ない情報こそ読者は見たいのではないか。(意訳)北杜夫「どくとるマンボウ航海記」

 

『どくとる〜』は、北杜夫さんの体験記だ。
この本は、船内や海外の港町での出来事を綴ったエッセイだが、当時は日本人の海外旅行の自由化が開始される以前なのであることを念頭においてほしい。海外旅行記が珍しいのだ。でも、著者のエッセイは、観光の記録というより、
その他のたわいもない感想で埋め尽くされている。
そこがいいのだ。些細な身の回りの話が聞きたいし、楽しい。

本筋で取りこぼした隙間も大事

私のブログも。喫茶店自体の話より、行くまでの高揚感とか、本筋でない話で終始している気がする。
ショパンだって、せっかく素敵な建築なのにデザイナーの事や、クラシック音楽のガイドはできない。この喫茶店から連想されるべつの出来事や、喫茶店に滞在したとき感じたことなど、とるに足らない独り言を書いている。でもそれでいいと思っている。

音楽の授業って何のためにあると思う?

そこで、ショパンにまつわる話を思い出した。
音楽といえば、中学時代に音楽教師が話してくれた話がとても印象に残っている。

「音楽の授業は何のためにあると思うか?」と聞かれた。
私は(心の声で)「どの音楽家がどんな曲を作ったかなど、音楽史を学ぶためだろうなぁ」としか思わなかったが、答えは意外だった。
「音楽の授業は、心を豊かにするためにある」というのだ。

その考え方、いい意味でカルチャーショックだった。音楽は心地よいかどうかが大事だ。人間の心の隙間に染み入り、なんとなく直感でときめいたりホッとしたり元気が出る音楽がいい。難しく考えるのをやめた私に残されたのは、作品名の記憶じゃなくて、聴いた時の満ち足りた気分だけ....。
音楽の授業で学ぶのは、歴史でもなく、作品と音楽家を結びつけるための暗記学でもない、と悟った私は、その日から直感でのみ音楽に親しんでいる。
せっかく、珈琲ショパンに来ておきながら、ショパンの曲紹介ができないのが残念だが、不案内である。

赤いビロードのソファに沈みながら、この空間にふさわしい、丁度いい音楽の中で気持ちよく漂うことができた。音楽が心の隙間を埋め、心を満たすものだというように。
このブログのなんらかの記事が、音楽のように誰かの心の隙間にすっと入ったとしたら、それは最高だ。

オリジナルメニューは強し。

最後にメニューの紹介を...。音楽は詳しくないけど、ショパンは好きだから何度も通っている。一度めはアンオーレをオーダーした。
ミルクにあんこを入れて混ぜたものだ。ミルクにあんこという組み合わせは、女性に嬉しい飲み物だと思う。カルシウムに加えて、あずきはむくみに効くらしい。カフェインが苦手な人もいけるオリジナルメニューだ。次の訪問でやっとアンプレスをオーダーできた。両面バターが塗られプレスされたホットサンドは、ジュージューと揚げ焼きのように香ばしくなっている。塩っ気と甘みとが最高だ。禁断のカロリーオーバーである!それと、オーダーを取る前に「うちのブレンドは濃いです」といわれる。そ言うほど濃いものってどんな味なのでしょうね。そこまで言われると気になる。

 

お店にあった神田のガイドブックで、ショパンが紹介されていた。
読みながら店内を眺め、キョロキョロしたので、きっと怪しかったに違いない。f:id:saria444:20170714204842j:plain

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 【2015年9月他】

東京都千代田区神田須田町1-19-9

 

【東京都:東京】アロマ 喫茶店の旅 丸ノ内線全駅制覇の巻その17*東京*

丸ノ内線全駅制覇の旅のつづき。今回はいよいよ東京駅だ。東京駅は広い。
東京人でも迷う。アロマは東京駅の喫茶店だ。ヤエチカという愛称の地下街にある。

丸ノ内線で降りたらすこし歩く必要がある。ひたすら反対側の八重洲口に向かって、進むのだ。丸の内線のある丸の内口と、アロマのある八重洲口は、JRの地下街の連絡通路で結ばれている。この通路の入り口を探すのにも最初は一苦労だった。
てっとりばやいのは、JRの改札に入って、駅構内を突っ切って通過するのがいいのだが、そうするにはJRの入場券が必要だ。

入場券を買うのはもったいないから、頑張って上記の連絡通路を歩く。
(グーグルマップ先生によると徒歩15分くらい?と出てきた。)

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八重洲地下街ヤエチカには、カフェは多々あれど、
アロマは純喫茶らしい雰囲気を残している貴重なお店だ。

人気店なので、お昼は満席の時も多いかもしれない。
この日は、隣の人と至近距離だった。
ところ狭しと並ぶテーブル席に座って、トーストを食べ、コーヒー飲んでさっとでた。

バスケットに入った厚切りトーストは、焼き加減が抜群だ。
小倉あんを追加で頼んだ。
東京で小倉トーストが味わえる貴重な純喫茶だ。
店内で売っているアロマのロゴ缶も可愛い。
部屋に並べたら可愛いだろうなと思いながら、まだ買っていない。

 

最近は吉本ばななさんのエッセイを読んでいる。
今は『下北沢について。』という本だ。
本書では、ばななさん下北沢の人々との交流が描かれ温かさが溢れている。
この本を読むと、地元の商店街にある個人商店や飲食店を
大事にしたいな、と心底思う。

ばななさんは飲み屋さんの話の流れでこんなことを書いていた。
私は妙にうなづいた。

お店によって自分のモードを変えなくてはいけなかったり、少し構えてみたり、自分がほんとうは何を欲しているかを考えたり、そういうことはやっぱり人生の楽しみのひとつだと思う。画一的な接客はつまらない。
同じようなお店にばかり行ったって何も空気が動かない。
自分の中の子供が退屈してしまう。出典:「下北沢について」吉本ばなな

 

非常に理解できる。私が喫茶店に行くときの気持ちに似ている。
空気感を大事にしている。
インテリアなどの物質的な点で喫茶店に惹かれている部分もあるが、
一番大事なのは、働く人やお客さんの空気だ。
温度や色を感じたい。表情や、声の高低加減、響き方がそれぞれ違うところがいい。
つくり笑いやうそいつわりがない。伝わらなければいいかえたり、声の大きさを変えたりする。黙っていたい時は言葉が少なくてもいいし、誰とも目を合わせないで過ごしたい日はそうしてもらえる。


その日の天気や体調によって、行きたい街や、食べたい物を自分に問う。
いろいろな喫茶店を巡る時の気持ちは、たくさんの要素で溢れている。
茶店は食べ物は美味しいし、心は平和になるし、健康的な趣味を見つけたなぁ、と我ながら満足している。

このお店のアロマというネーミングがとてもいいと思う。
”芳しい”という言葉は、心が惹かれる好ましい、素晴らしい香りを表現するときに使う。さて、コーヒーが芳しいと思えるようになったのはいったいいつからだろう。
子供のころ、コーヒーって苦いし、なんでこんな飲み物を大人は美味しいって言うんだろうと。好奇心で飲んでみたいと思うけどやっぱり苦くて、
一口で後悔したことを思い出す。

 

本来の私は、まいかい同じメニューを頼むより、知らないものを選ぼうとするタイプだ。だからコーヒーも馴染みのない国の豆のストレートを頼んだり、そのお店独自のブレンドをオーダーする。これが食べたいなとか、これが欲しいな、とか欲しいものがはっきり言えるときが健全な時である。とくに何を食べたいか、まとまらない時や、なんでもいいから決めらない、という言葉を発する時は、非常に疲れている、というバロメーターになる。
そういう時は、コーヒーに強い好奇心を抱いたこどもの頃を思い出し、
その退屈知らずの無邪気さを取り戻す。そのトリガーは、コーヒーのアロマだと思う。コーヒーの香しさが、私にとっての癒しなのはそのせいかもしれない。

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東京都中央区八重洲2-1 八重洲地下街 八重洲地下1番通り

【2016年5月訪問】