純喫茶丸 8knot    〜喫茶店で考えた〜

2015年からの純喫茶訪問ブログ。純喫茶をはしごする船ということで”純喫茶丸”という船の名前がタイトルです。

【東京都:内幸町】草枕

新橋周辺の喫茶店シリーズをお届けする。
草枕は、虎ノ門駅または内幸町駅が最寄りだ。

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割烹料理屋さんの居抜きだろうか。ここが〈草枕〉という名の美味しい珈琲をだすお店
だと知らないと見逃してしまうかもしれない。

おっと、でもこの筆書きの看板が目に留まったら、足を止めてしまうだろう。

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 「智に働けば 角が立つ。情に棹させば流される。
意地を 通せば 窮屈 だ。とかく人の世は住みにくい」
これは、夏目漱石著 『草枕』の冒頭の出だし部分だ。

こんな気分になった時こそ、喫茶店草枕〉に来るといいだろう。
マスターの声が柔らかく、包容力がある。

カウンターに座る人は、誰もがマスターに話しかけたい様子だった。
決して人の話を否定をしないのだ。
押し付けがましくもない。
ナチュラルセラピストのようなマスターだ。

それに大量の本の前でコーヒーを飲むのは幸せである。
ここで『草枕』を読んだら、趣があるだろう。

カウンターにならぶ文庫本のタイトルを見ているうちに、
人差し指が勝手に動く。
文庫本の表紙と棚の隙間に人差し指をいれて、
反射的に本を取り出していた。

 

池波正太郎さんの美味しそうな本(内容が)や、きのこの本や、グルメエッセイに
まだ読んだことない日本文学がある。
本をインテリアにするのは素敵だけど、このお店のはただのオブジェではない。

全てのセレクトに筋が通っているのだ。本をつまみに珈琲が飲めるのはなんと楽しいのだろう。

 さぁ船のはなしをしよう。海上勤務のお話である。 私の周りにいる船員さんたちは、
1年弱を海上で過ごし、自宅には戻らない。

船が職場であり、船が寝床である。その間ほぼ同じメンバーと過ごす。
息抜きしたいときはどうするのだろう。

想像しきれないけど、やはりそのうちのひとつは、食の時間なのではないかと思う。
食卓だ。ご飯の時間は和気あいあいだ。乗り合わせるのは、日本人だけではない。

船内のコミュニケーションといえば、英語は、あとはフィーリングだ。
船員さんってすごいのだ。勢いと気持ちで伝わっているのである。

そんな彼らにとって、英語とも日本語ともいえない、〈船乗り用語〉と呼ぶべき
国際語がある。

最近聞いた話だが、食事のことは、”ちゃぶちゃぶ”といえば通じるらしい。
どこかで聞いたことがあるな。そう、日本のちゃぶ台が由来らしい。
ちゃぶちゃぶという響きがおもしろい。

なんともホッとする言葉ではないか。

ご飯だよ〜。
ちゃぶちゃに

海上の狭い空間で、故郷や家庭から遠く離れ、
ともに食事をしたりコーヒーブレイクをしたりする時間は、ホッとするひとときだろう。

ここで迎える転流時、時の瞬きにさらわれないよう心をリセットしよう。心が洗われるお店だ。

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【2015年8月訪問:他】

【東京都:虎ノ門】珈琲舎バン 虎ノ門店 最高の潮時

新橋周辺の喫茶店シリーズをお届けする。〈バン〉は虎ノ門にある喫茶店だ。
ビジネス街のレトロなオフィスビルの地下食堂街にある。ひょんなことからであった。

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 ここも私の潮待ち場所だ。潮汐については、占いが好きなこともあり、満月と新月の日を意識している。

月の影響で潮の満ち引きが起こること。 その感覚は、船の世界では最重要である。

 「潮時」という言葉は

「物事の終わり」

というニュアンスで使用する人が多いと思う。

船の世界に身をおいて、そのことばに初めて意識を注いでみた。

 

「潮時」という言葉は、

終わり、というよりも”ちょうど良いタイミング”という意味で使う。
つまり最高潮=潮時だ。

潮時は、切なくではなく、楽しみに待つものだ。 
この喫茶店も私の潮待ち場所である。

新橋周辺の喫茶店は、潮時を待つ場所としてたいへんお世話になった。
赤いソファとグリーンのタイルのテーブルが統一感があり素敵だ。
ちょうどいい場所で、ちょうどいい時間を過ごせる場所だ。

さぁ、コーヒーゼリーが来た。気分は最高潮だ。

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この日のお供は『焼き餃子と名画座 わたしの東京 味歩き』平松洋子著)だ。

 

平松さんの、思わずお腹がすいてしまう表現力に感服だ。

【2016年12月訪問】

 

【東京都:虎ノ門】フーガ 虎ノ門で潮待ち

新橋周辺の喫茶店シリーズをお届けする。フーガは、虎ノ門にある喫茶店だ。 

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ビルの谷間の地下にある町の喫茶店だ。
こんな感じのお店を虎ノ門で見つけた時の感動たるやご想像いただけるだろうか。

モチーフは音楽のようだ。階段の踊り場にある看板はバイオリンと、ト音記号だろうか。シルバーなのがシャープな音色が聞こえてくる

インテリアをみると、アットホームな喫茶店という印象だ。
この加減が、肩の力が抜けるし安心感がある。

虎ノ門周辺は、おしゃれだったり、かしこまったりガヤガヤの居酒屋か(それも好き)、逆に老舗すぎて肩肘張ったりしてしまう。

だからこそ、こういうスタイルの存在はありがたい。

 

 さて、私がここで過ごしたのは〈潮待ち〉のためだ。
潮待ちというのは、船員用語だ。現場で日常的に飛び交っていた

私の好きな専門用語のトップ3だ。
本来の意味は
”潮流を利用して、航行する船が潮流の向きが変わるのを待つこと”だ。
面白いことに、船に対してではなく人間に対しても使うのだ。
”時間つぶしする”という意味だ。

 例えば、アフター5(6?)に待ち合わせがあるとする。

それまであと小一時間ほどあって、社内で手持無沙汰にしていると、
社内ではこんな会話がなされる。

「お疲れ様。まだ残業してるの?」

「いえ、待ち合わせまで潮待ちしています」と。

 ここフーガでは、まさになんどか「潮待ち」をした。業務後の習い事まで、時間が少しあったからだ。

ちなみに「潮待ち」という言葉には、楽しみであるというニュアンスが含まれる。
気乗りしないことを待つときには、使わないそうだ。

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潮待ちで1時間弱を過ごしたフーガである。この当時は、能町みね子さんの『きまぐれミルクセーキ』を読んでいたので、ミルクセーキをひたすら頼んでいた時期だ。

新しくはいったバイトらしきお姉さんが、ミルクセーキを作るのに、奮闘していた。
おいしかったので、この味をぜひ守り続けてほしい。

というわけで、この日のお供は『きまぐれミルクセ〜キ』 (能町みね子著)だ。

【2016年6月】

 

【東京都:新橋】カトレア 美しいジャコブスラダー

新橋周辺の喫茶店シリーズをお届する。
カトレアは、新橋の〈ニュー新橋ビル〉内にある喫茶店だ。
ニュー新橋ビルの建築構造が独特で好きだ。梯子柄が素敵である。

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カトレアでは、ニュー新橋ビルの梯子めいた壁を互い違いに並べたデザインをたっぷり鑑賞できる窓側が好きだ。
梯子といえば。海の言葉に〈ジャコブスラダー〉がある。
大型貨物船の船体から吊るされる縄梯子のことだ。

おもに、パイロットと呼ばれる各港の専門家が、洋上から船に乗り移る際使用する。
タグボートという小型の船で、大型貨物船の近くまで行き、そこでパイロットは垂らされた梯子を昇るのだ。このジャコブスラダーの名称は、聖書の物語に由来する。
ジャコブ(ヤコブ)の夢だ。
天使が昇降する天と地を繋ぐ梯子、からつけられたのだ。

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隙間時間に訪問する喫茶時間はホッとする。隙間の構造が美しいこのニュー新橋ビルでは特にそうだ。
まだまだ存在していてほしい。新橋の天に続く梯子を見ながら、そう思う。
ジャコブが天使が梯子をのぼるさまを見て救われたように、
私もカトレアで夢心地に癒される。

 (参考:成山堂「海の英語」佐波宣平)

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【2015年7月訪問】

【東京都:新橋】カフェドカナール〜 タッチバンカー

新橋周辺の喫茶店シリーズをお届けする。カフェドカナールは、新橋の〈ニュー新橋ビル〉内にある喫茶店だ。

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ニュー新橋ビルは純喫茶天国である。あんな喫茶店や、こんな純喫茶が入っている。

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船の専門用語に、タッチバンカーというものがある。
簡単に言うと、目的地以外に立ち寄り、燃料を補給することだ。
燃料を補給するためだけの立ち寄りだから、業務が終わればすぐに出航しなければならない。

 

私は、15分あったら喫茶店にはいろうと思っている。
その15分のあいだに、いっさいの無駄な動きが出来ず、食べ終わるやすぐに出発しないこともある。
ここは勤務地からは距離が少しあるのだ。
でも、お昼休みはあと30分しかない。

 

せっかく来たなら、もっとゆっくりすればいいのに、とは思う。
でも入ってみて気に入ったら再訪すればいいのだとも思う。

チャンスがあればとにかく飛び込む。
せっかくいい場所だからもっと滞在したいし、
この空気と景色を目に焼き付けたいと思う。

そう思いながら、思いをめぐらせる。せっかく未知の地(海?)に来たのに、陸に降りられない船員さんも同じ気持ちなのではないかと。

寄港したけど陸には降りれないのだ。
せめてもう少しこの場所にいたいけど、時間の関係で長くはとどまれない、と。

私もエネルギー補給しなきゃ。午後の航行(業務)を遂行するため、
お腹に「よし!」という気合いを入るのだ。

燃費計算も大事である。

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次はいつ来られるかわからない、だから、無理に立ち寄ったががホットサンドが美味しくて満足した。
正味5分くらいしか滞在できなかったが、次回ゆっくりくるための予習だとおもえば、と自分を納得させた。

【東京都:虎ノ門】ヘッケルン

新橋周辺の喫茶店シリーズをお届けする。ヘッケルンは、虎ノ門にある喫茶店だ。

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職場の近くにある、何度も来店したことがあるが、ランチタイムに訪問したことがないと気づく。

昼のヘッケルンは、夜より外観がはっきり見える。

 

カウンターはぎっしりお客さんでいっぱいだった。
ランチの後のデザートなのか、ほとんどのひとがプリンセットを頼んでいる。
カウンターに積まれたたくさんのグラスの眺めは、ランチのピーク時ならではだ。

 

いちばん最初に訪問した日は、夜で、新橋のなつかし話をマスターが常連さんと語らっていた。

当時は新橋のことをよく知らなかったから、ここに来れば、この町のことがわかるな
と思った覚えがある。

壁の「寝ないでください」の文面におもわず微笑んだ日は遠い。

 

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プリンに浮かぶヘッケルン

スプーンを入れると崩れる映像。

新橋の思い出も食べてしまおう。

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 【2017年3月ほか:訪問】

【新橋】サンマルコ

新橋周辺の純喫茶シリーズをお届けする
サンマルコは、新橋の〈ニュー新橋ビル〉内の喫茶店だ。

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奥ゆかしく佇んでいる。こんなところにこんないいお店があったんだ。知らなかった。
ランプとソファのインテリアが、可愛く揃っているところが好きだ。

サンマルコのいいところは、鉄の窓から窓から電車が眺められるところだ。
鉄道を横目に、喫茶店で過ごす時間が好きだ。

鉄骨と鉄道という”鉄の塊”コラボに癒される。窓の外は駅だけど、まだ昼の12時。
帰りたいけど帰れないジレンマにも刺激を受ける。

 

なすがポイントのちょっとおしゃれなナポリタンがでてきた。
この頃は純喫茶のナポリタンをことごとく注文していた時期のようだ。

好みの雰囲気なので、写真の撮影許可をいただき、パシャパシャした。
「ただ古いだけなのにね〜。どこがいいのかね?」と不思議そうなご主人。

魅力に気づいていないのか控えめなのか。
「すごい素敵ですよ!」

人間でも魅力がある人ほど謙虚ですだ。

私の好きな言葉がある。
「実るほど こうべを垂れる 稲穂かな」

〈ニュー新橋ビル〉の奥、控えめに佇む店構えから、
そんな気概を感じる喫茶店だ。

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【2015年5月訪問】